研究課題
【目的】単純ヘルペスウイルス(HSV)を角膜内皮細胞に感染させた全ゲノム転写解析においてIndoleamine 2,3-deoxygenase 1(IDO1)が感染による転写の増強が6番目に多い因子であった。IDO1は免疫制御に関与していることが報告されているため、その免疫制御に果たす役割を検討した。【方法】不死化ヒト角膜内皮細胞にHSV-1型KOS株を感染させ、IDO1の発現、機能、その免疫調節活性誘導能を検討した。【結果】HSV感染後、IDO1転写のみならずIDO1タンパクおよび酵素活性の顕著な増大を感染12時間後から認めた。HSV感染角膜内皮とHSV特異的アロリンパ球との刺激試験では、CD4+T細胞はIL-10を産生した。HSV感染角膜内皮と72時間混合培養したアロCD4+ T細胞は、末梢血由来の抗原提示細胞によるHSV特異的CD4+T細胞の増殖反応を抑制することができ、HSV感染角膜内皮は、抗原特異的調節性リンパ球(Treg)誘導活性を持つことが判明した。この作用は、角膜内皮のIDO1発現をIDO1特異的siRNA transfectionにより抑制すると減弱した。さらに、プラスミドのtransfection によりIDO1の過剰発現をさせたヒト角膜内皮では、HSV特異的なIL-10産生性CD4+Tregの誘導活性が増大した。【結論】角膜内皮は、HSV感染後、IDO1を介してCD4+Tregを誘導することができ、感染に対する免疫応答を制御する機能をもつことが判明した。
3: やや遅れている
サイトメガロウイルスの角膜内皮細胞に対する感染力が弱いため、分子の機能解析が困難であったため、サイトメガロウイルスの角膜内皮細胞感染のゲノム転写網羅解析で、もっとも多く表現されていたIDO1の分子の機能を同種の単純ヘルペスウイルスを用いて解析した。
現在、感染増殖可能なサイトメガロウイルス株がようやく得られたため、これを用いて感染内皮細胞に対する細胞性免疫反応を検索する。しかし、それでも個々の分子の解析については難しい可能性があり、それについては単純ヘルペスウイルスの方で行う(RAGEなどが候補分子)。
物品について予定よりも安価に購入できたため
繰り越しは少額であり、当初の予定どおりを計画している。
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