研究課題
4週齢BALB/cヌードマウスの腎皮膜下に、胎齢15日のF344ラットから採取した胸腺を移植して、TGヌードマウスを作製した。胸腺移植後1ヶ月後から経時的にマウスを安楽死させ、血清を採取するとともに、臓器を組織標本とした。自己抗体の有無を凍結切片と血清を反応させ、蛍光抗体間接法で検討した。組織学的な検索では胸腺移植後40日目で涙腺とハーダー腺にリンパ球の浸潤を認めた。松果体は少し遅れてリンパ球の浸潤が見られた。胸腺移植後3ヶ月後に角膜に、4ヶ月後からぶどう膜と網膜にリンパ球の浸潤がみられるようになり、8ヶ月後の診断で涙腺、ハーダー腺と角膜は全例に炎症を認めた。松果体、ぶどう膜と網膜の炎症は約半数のマウスに認めた。自己抗体の検討では臓器に炎症があるマウスにおいては、その臓器と反応する自己抗体が検出できた。抗体価は炎症が激しくなるほど上昇した。涙腺とハーダー腺においては上皮細胞が反応した。角膜においては上皮細胞あるいは角膜固有層と反応する抗体が、網膜においては杆錐状体層と反応する抗体が確認できた。臓器炎と自己抗体の出現は相関しているので、自己抗体価の高いTGヌードマウスの脾臓からパニング法や抗体処理法によりCD4陽性細胞を採取した。このリンパ球をエフェクターとして5x106個を無処置のヌードマウスやscidマウスに静注し、1ヶ月後にレシピエントマウスの臓器に自己免疫病が発症しているかを検討した。その結果ドナーの臓器炎に対応したレシピエントの臓器炎が確認できた。次に正常マウスの脾臓にはTregが存在しているので、正常マウスの脾臓のCD4陽性細胞1x107個とエフェクター細胞を同時にヌードマウスに注射し経過を観察したが、病変の発症は阻止できなかった。そこでエフェクター細胞になる前にTregを作用させる方法を検索する予定である。
2: おおむね順調に進展している
異種の胸腺で教育されたT細胞が臓器特異的なぶどう膜網膜炎、シェーグレン病等の自己免疫病を高率に発症するが明らかとなった。この自己免疫病は外部からの抗原刺激なしで自然に発症することから、ヒトの病変のモデルとしても大変有用であると考える。
TGヌードマウスに発症する自己免疫病を阻止する方法として、エフェクター細胞が確定する前、すなわち自己免疫病が発症する前にTregを静注してみることを試みる。同処理したTGヌードマウスは経時的に採血して自己抗体の出現をチェックする。臓器抗原に対する免疫系の寛容は、胸腺における臓器抗原特異的に働くエフェクター細胞の削除やこの抗原特異的なTregの産生に依存している。これらは胸腺髄質におけるaire遺伝子の発現が重要である。そこでTGヌードマウスの移植胸腺におけるaire遺伝子の発現様式を免疫組織化学法で検討し、Tregの存在をFACSで解析する。TGヌードマウスには自己免疫病が発症することから、移植ラット胸腺内では自己免疫病が発症する臓器抗原の発現が極めて微量であるかないことが推測される。そこでTGヌードマウスにおいて自己免疫病が発症する前、あるいは自己免疫病が発症してから移植してあるラット胸腺内に自己免疫病発症臓器と同じ臓器片を移植してみる。移植臓器片は後期胎児が新生児マウスから採取したものを使用する。これらのTGヌードマウスは経時的に採血し、ラット胸腺内の移植片に対応する臓器に対する自己抗体の消長を蛍光抗体間接法により検討する。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件)
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