研究課題/領域番号 |
25462757
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
福島 敦樹 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (40281737)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 自己免疫病 / 自己抗体 / ヌードマウス / 網膜 / 涙腺 / 制御性T細胞 / 胸腺 |
研究実績の概要 |
4週齢BALB/cヌードマウスの腎皮膜下に、胎齢15日のF344ラットから採取した胸腺を移植して、TGヌードマウスを作製した。このマウスにはぶどう膜網膜炎や涙腺炎等の臓器局在性の自己免疫病が多発する。エフェクター細胞はCD4陽性細胞であり、この細胞をヌードマウスに注射しておくと、TGヌードマウスに発症していた自己免疫病をトランスファーすることが出来た。TGヌードマウスにおいて自己免疫病が発症する前に、制御性T細胞(Treg)の投与を試み、臓器障害が抑制出来るかを検討した。ヌードマウスにラット胎児胸腺を移植した2週後にTregを静注し、2ヶ月後から経時的に採血し、血中に自己抗体が出現するかを、血清で個々の正常臓器の凍結切片を免疫染色し、蛍光抗体間接法で観察した。その結果8ヶ月齢までの検討で、若干例で胃の壁細胞や涙腺の上皮細胞と反応する抗体が検出されたが、対照に用いたTGヌードマウスの血清と比較して、明らかに有意差が見られた。この結果、Tregはまだ活性化していないエフェクター細胞を抑制することが出来ることを示唆している。 胸腺にはaire遺伝子の発現が見られるが、これはaireに対する抗体で免疫組織化学的に観察出来る。Aire遺伝子が胸腺で発現すると個々の臓器抗原が産生され、これにより自己抗原反応性のT細胞が削除されたり、また抗原特異的なTregが産生されたりする。それでTGヌードマウスの胸腺ではどの様な細胞がaire遺伝子を発現しているかを検討した。その結果aire遺伝子は、胸腺髄質のラット由来の上皮細胞のみが発現していた。このことはTGヌードマウスにおいてはマウスの臓器抗原が胸腺内で発現されていないので、個々の臓器抗原と排他的に反応するT細胞が削除されず末梢化し、さらにマウスの臓器抗原に対するTregが産生されないことになり、自己免疫病が発症していることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度にエフェクターT細胞とTregを同時にヌードマウスに注射して、自己免疫病の発症を抑制出来るかを検討したが、Tregは活性化したエフェクターT細胞を制御することはできなかった。そこで今年は活性化する前のエフェクターT細胞をTregが抑制できるかを検討したが、その結果自己免疫病の発症を阻止できた。このことから例えエフェクターT細胞が末梢化していても、この細胞が活性化する前に健全なTregが同時に存在すれば自己免疫病は発症しないことが明らかとなった。 胸腺で発現するaire遺伝子は臓器抗原を産生し、それにより抗原反応性のT細胞を削除したり、Treg が発育したりするのに関与している。TGヌードマウスではラット由来のaireのみが胸腺で発現していることから、マウス臓器抗原に対するTregが欠如していることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
TGヌードマウスの移植ラット胸腺内ではラットのaire遺伝子の発現はあるが、マウスのそれはない。そのためにマウスの臓器抗原に対するTregは産生されない。そこでTGヌードマウスにおいて自己免疫病が発症する前、あるいは自己免疫病が発症してから移植してあるラット胸腺内に自己免疫病発症臓器と同じ臓器片を移植してみる。移植臓器片は後期胎児が新生児マウスから採取したものを使用する。これらのTGヌードマウスは経時的に採血し、ラット胸腺内の移植片に対応する臓器に対する自己抗体の消長を蛍光抗体間接法により検討する。 TGヌードマウスでは正常マウス並にFoxp3陽性のTreg が観察される。TGヌードマウスの腎皮膜下に新生児マウスとラットの自己免疫病の標的臓器を移植してみる。その臓器を1ヶ月後に採取し、組織学的に観察する。TGヌードマウスでは胸腺でラット由来のaireの発現があることから、マウスの移植臓器は組織障害を受けるが、ラットの移植臓器はラット臓器抗原に対するTregの存在が予測されるので、障害を受けないと思われる。もし障害を受けなかった場合は、別のTGヌードマウスでラットの臓器を移植した後で抗CD25抗体を投与し、Tregを削除してみる。これによりラット臓器の障害が予測される。自己寛容を誘導するaire遺伝子の重要性が明らかとなる。
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