研究課題/領域番号 |
25462760
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
毛塚 剛司 東京医科大学, 医学部, 准教授 (00287137)
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研究分担者 |
松永 芳径 東京医科大学, 医学部, 兼任助教 (20421050)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 抗アクアポリン4抗体陽性視神経炎 / アストロサイト / マウス実験的自己免疫性視神経炎 / 視神経脊髄炎 / GFAP |
研究実績の概要 |
プロジェクトの2年度目である平成26 年度は、ex vivo モデルの作製(実験1)とNMO-EAON に対する高濃度IgG 投与実験(実験2)をex vivo モデルやin vivo モデルを用いて解析した。 実験1:NMO-IgG のアストロサイト障害性の検討 -ex vivo モデル- マウス視神経を採取したのち24 時間, 酸素化した培養液内に加えて、1)-5)の条件で培養を行った。1)培養液のみ(髄液の組成と同等)、2)正常人血清(10μg/ml)、3)NMO-IgG (300μg/ml)、4)補体 (10% Pooled Normal Human Complement, Novi 社)、5)NMO-IgG + 補体である。評価としては、アストロサイトの障害の程度をGFAP 染色を用いて病理組織学的に行った。使用抗体は、アストロサイトの染色として GFAP 染色, HRP-Labelled Polymer, DAB(発色試薬)である。健常者血清, 補体, NMO-IgG群でGFAP染色面積が増加し、NMO-IgG+補体投与群では、GFAP染色面積が有意に減少していることが判明した。 実験2:NMO-EAON のex vivo、in vivo モデルを用いた高濃度IgG 投与による発症抑制実験 NMO-EAON のin vivo、ex vivo モデルを昨年度の方法で作成して、視神経組織の培養下でヒトIgG 0.5-1.0mg/ml+ヒトNMO-IgG+補体を加えて、組織の変化を解析した。組織染色はアストロサイトの生存率を中心に検討した。NMO-EAONのin vivoモデルはNMO-IgGの状態によるものか、発症率にバラツキがあり、高濃度IgG投与実験の陽性コントロールとして問題があった。一方、実験1で示したex vivoモデルについては、高濃度IgGのin vitro投与により、NMO-IgG+補体群で抑制されたGFAP染色面積が一定量の割合で復元された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Ex vivo実験は、概ね実験計画は順調に進展している。しかし、In vivoモデルはまだ発症率が不安定であり、高濃度IgGを用いた治療実験で有意な結果が得られなかった。NMO-EAONのin vivoモデルは投与経路が腹腔内のために発症率が一定しないのかもしれない。in vivoモデルの発症率を安定させるためには、NMO-IgGの脳室内投与などへの変更を再検討する必要があり、サイトカインやケモカイン測定など必要経費が高額となる実験は次年度に持ち越しとした。
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今後の研究の推進方策 |
プロジェクトの最終年度である平成27 年度は、総まとめに当たるin vivo モデルを用いた細胞治療を行う。細胞治療には、免疫制御作用の強いCGRP やVIP などの神経ペプチドか、IL-10 などの抑制性サイトカインの遺伝子を樹状細胞に導入して、免疫制御性細胞を作成する。遺伝子導入方法は、以前行ったウイルスベクターを用いないエレクトロポレーション法で行う。免疫制御性遺伝子導入樹状細胞をex vivo、in vivo モデルに投与後、抑制を検討するに当たり、NMO-EAON のin vivo モデルを昨年度の方法で作成して、既に他の動物モデルに対して実績のあるCGRP やIL-10 などの免疫制御に重要な分子を遺伝子導入した樹状細胞を用いて発症抑制実験を行う。この時、視神経炎発症に関与するNMOーIgG抗体の投与経路については適宜再検討を行う。 1)CGRP 遺伝子導入免疫制御細胞の作製法:まずCGRP cDNA の調製を行うためにヒト網膜色素上皮由来のARPE-19 細胞株よりtotal RNA を抽出し、Reverse transcription にてmRNA からcDNAを合成後、PCR 法でCGRP cDNA 領域を増幅し、pCR2.1 プラスミドにクローニングする。 2)IL-10 遺伝子導入免疫制御細胞の作製法:IL10 cDNA のクローニングを行う。マウス骨髄細胞をGM-CSF 存在下で培養することにより樹状細胞を誘導し、LPS 添加により成熟樹状細胞とした後、CGRP 発現ベクターもしくはmock をエレクトロポレーション法(Nucleofector II)で導入する。 上記1)2)から作成した免疫制御性樹状細胞をin vivo でNMO-EAON に投与して発症抑制されるか検討する。また、培養脾細胞由来のサイトカインをELISA、フローサイトメトリーを用いて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
現在までの達成度にも述べたが、in vivoモデルはまだ発症率が不安定であり、高濃度IgGを用いた治療実験で有意な結果が得られなかった。in vivoモデルの発症率を安定させるためには、NMO-IgGの脳室内投与などへの変更を再検討する必要があり、サイトカインやケモカイン測定など必要経費が高額となる実験は次年度に持ち越しとした。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度から次年度に持ち越した、in vivoにおける難治性視神経炎マウスから得られた脾細胞あるいはリンパ節細胞からのサイトカインおよびケモカイン産生量の測定は、平成27年度に行う。
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