研究課題/領域番号 |
25462763
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
奥 英弘 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90177163)
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研究分担者 |
福原 雅之 大阪医科大学, 医学部, その他 (00238510)
小林 崇俊 大阪医科大学, 医学部, 講師 (10567093)
奥野 高司 大阪医科大学, 医学部, その他 (20411366)
池田 恒彦 大阪医科大学, 医学部, 教授 (70222891)
石崎 英介 大阪医科大学, 医学部, その他 (70530434)
高井 真司 大阪医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80288703)
喜田 照代 大阪医科大学, 医学部, 講師 (90610105)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | aquaporin 4 / TGN-020 / グルタミン酸 / グルタミン |
研究実績の概要 |
aquaporin 4(AQP4)阻害剤の投与により、脳浮腫が軽減することが報告されている。ラット視神経挫滅モデルを用いた研究から、ラット視神経では挫滅翌日にAQP4が1.8倍にまで増加することがわかっている。AQP4の初期増加を抑制することで、視神経浮腫が抑制される可能性、および神経保護作用につき検討した。ラット視神経を挫滅し、その直後にAQP4阻害剤であるTGN-020 (5.0 mg/kg)を腹腔内投与した。1週間後に網膜神経節細胞数の変化をTUJ-1染色で評価し、網膜のBAX/Bcl2をreal-time PCRで測定した。またラット視神経由来の培養アストロサイトを用い、TGN-020のグルタミン酸からグルタミンへの変換におよぼす影響を、グルタミン・グルタミン酸定量キット(Sigma)で測定した。その結果、挫滅1週間後の網膜神経節細胞は、対照2014±91.3 (n=6)、crush群1010±150.4 (n=11)、TGN-020群743±371.2/mm2 (n=7)で、TGN-020は有意に網膜神経節細胞数を減少させた(P=0.047, t-test)。またBAX/Bcl2の解析でも、TGN-020の投与は神経傷害的に作用していることが明らかになった。またTGN-020は視神経培養アストロサイトに作用し、1.0-100nMの濃度で、用量依存的にグルタミン酸からグルタミンへの変換を阻害した。したがって視神経挫滅モデルを用いた検討では、AQP4阻害剤はむしろ神経傷害的に作用し、網膜神経節細胞死を助長する結果となった。その機序として、AQP4 がグルタミン酸代謝過程に関与していることが明らかになった。すなわちAQP4阻害剤により、視神経傷害時に生じるグルタミン酸がさらに増加し、その結果神経傷害的に作用したと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
AQP4阻害剤が視神経挫滅モデルでは神経傷害的に作用することを明らかにし、その機序として、AQP4がアストロサイトのグルタミン酸取り込みと、グルタミンへの変換に必須であることを明らかにできた。
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今後の研究の推進方策 |
ラットを用いて、自己免疫性視神経炎を作成し、AQP4の発現変化を経時的に解析し、炎症性視神経浮腫とAQP4の関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度までは、ラット視神経挫滅モデルを用いた研究を行った。平成27年度は新たに自己免疫性視神経炎をラットで作成し、炎症性視神経浮腫とAQP4の関連を研究する。
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次年度使用額の使用計画 |
視神経炎では炎症性浮腫が必発であるが、AQP4発現との関連は不明で、浮腫の本体が細胞傷害性浮腫が主体化か、血管性浮腫が主体化かなど不明な点が多い。視神経炎とAQP4の関連を明らかにするため、bovine myelin basic protein(MBP)とcomplete Freund's adjuvantを用いて、Lewisラット(雌)に実験的自己免疫性視神経炎を作成する。このモデルは、全身の神経症状を伴い、四肢麻痺などの状体から自己免疫機序が働いたかどうかを判断することができる。その上で、瞳孔反応で視神経炎の発症を確認できたラットを用いて研究を行う。検討項目として、視神経のAQP4発現をwestern blotで定量し、免疫組織学的にAQP4発現と炎症細胞浸潤、およびアストロサイトの関連をみる。
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