酵母細胞壁抽出物であるZymosanを野生型マウスの眼球へ投与し炎症を惹起し、12時間、24時間、72時間後に硝子体中への好中球浸潤についてFACSを用いて検討した。その結果、マクロファージの浸潤よりも早期に好中球が硝子体へ浸潤することが判明した。さらにZymosan刺激後に硝子体から精製した好中球では、視神経再生因子の1つであるオンコモジュリンの強い発現が認められた。好中球によるオンコモジュリンの産生量はZymosan刺激の12時間後にすでにピークに達しており、マクロファージと比較して非常に早いものであることがわかった。このれら結果から、視神経再生因子であるオンコモジュリンの早期産生にはマクロファージよりも好中球が重要であることが示された。次に、Zymosan刺激では神経保護効果があることが知られていることから、好中球と神経保護の関連を検討した。好中球の中和抗体である抗Ly6G抗体を眼球内へ投与すると、好中球の浸潤が抑制されることは既に知られている。そこで、Zymosanと抗Ly6G抗体の両方を眼球内へ投与したところ、オンコモジュリンの産生だけでなく視神経の再生効果も同様に著しく減少していた。ところが神経保護効が知られているCiliary neurotrophic factor (CNTF)、Leukemia inhibitory factor (LIF)などの発現量には変化が認められなかった。この結果から、好中球は視神経再生を促進するが、神経保護には寄与していない可能性が考えられた。
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