研究課題
本研究はこれまで十分に検討を重ねてきた多発性硬化症の疾患モデルである実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)を活用し、新しい視神経炎の治療法を開発することを目的としている。すでに我々はToll-like receptor(TLR)の下流で活性化するストレス応答分子であるApoptosis signal-regulating kinase 1(ASK1)が、グリア細胞における自然免疫系の活性化に関与することを報告している。実際にASK1欠損マウスではEAEが軽症化するが、発症そのものの抑制は不可能であった。そこで本研究では薬剤によるTLRの発現抑制とASK1シグナル経路阻害の相乗効果により、視神経炎の発症抑制が可能か検討中である。今年度はある薬剤の投与により、TLR4の発現が抑制されることを見出した。さらに同薬剤はT cellにおけるIL-17の産生抑制と、樹状細胞およびグリア細胞におけるサイトカイン産生も抑制することがわかった。野生型マウスを利用したEAEにおいては、薬剤投与により脊髄炎および視神経炎の軽症化が確認された。さらに同薬剤をASK1欠損マウスに投与した場合には、EAEの発症率を低下させることが可能であった。この場合にはもちろん視神経炎も観察されず、多局所網膜電位の測定により、視機能も十分に保たれることを確認できた。一方、Dockファミリー分子の遺伝子改変動物についてもEAEにおける表現型の解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
間もなく1報が投稿可能な状態にある他、遺伝子改変動物を用いた実験も順調に進行しているから。
現在の方針で予定通り実験を継続する。
消耗品の共有等により、経費の節約に努めたから。また今年度は出版経費などが必要なかったから。消耗品、学会参加費、旅費の他、出版費用などとして使用予定。
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Cell Death and Differentiation
巻: 20 ページ: 1250-1256
doi: 10.1038/cdd.2013.91
巻: 20 ページ: 270-280
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Clinical Neuroscience
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http://www.igakuken.or.jp/retina/