研究課題
国立成育医療センター眼科では多様な眼疾患の診療活動を行い、先天白内障、緑内障、重症網膜硝子体疾患の手術に従事する機会が多いが、小児の視覚障害の半数以上を占める先天眼異常の中には治療法がなく、将来の再生医療を期待する疾患が多い。本研究では、「再生医療を目指した基盤研究として、網膜神経細胞の分化誘導法の確立を目的」に実験を行った。マウスES細胞に1,600種類の臨床薬剤を添加して、神経細胞分化を促進する薬剤を探索した。その結果、1)複数の化合物が同定された、2)このうちスタチンは、中内胚葉遺伝子の発現誘導を抑制し、逆に外胚葉遺伝子の発現を亢進した、3)スタチンは細胞内代謝物組成を大きく変動させた、4)薬理学的解析から、コレステロールの濃度低下ではなく、蛋白質ファルネシル化の阻害がスタチンによる細胞運命変換の原因であることを見出した。マウスを使用したin vivo検証実験が進行中である(論文投稿中)。また、培養皿の中で長い軸索を持つ視神経細胞(網膜神経節細胞)を作ることは難しいと考えられていたが、ヒトiPS細胞から、機能する網膜神経節細胞を作製することに、世界で初めて成功した(Scientific Reports 2015)。以上の研究成果は、眼科領域の再生医療の確立に貢献すると期待される。
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