研究課題/領域番号 |
25462776
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
猪股 裕紀洋 熊本大学, 大学院生命科学研究部, 教授 (50193628)
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研究分担者 |
須田 博子 熊本大学, 医学部附属病院, 非常勤診療医師 (40632659)
横内 裕二 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60252227)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Sox9遺伝子 / 胆道閉鎖症 / 細胆管増生 / 肝線維化 |
研究実績の概要 |
2012年4月~2015年3月に当院で葛西手術をした9例について、手術時病理組織を用いて免疫組織学的検討を行った。SOX9+、DAPI+、SOX9+DAPI+細胞数はImageJもしくは目視にて計測し、CK19+細胞はImageJで面積測定を、線維化評価はsirius red染色を行い評価した。SOX9率(%)=SOX9+数/DAPI+数x100、異所性SOX9率(%)=SOX9+HepPar1+数/補正DAPI+数(補正DAPI数:HepPar1+領域のDAPI数)x100、%CK19=CK19+面積/1視野面積x100、%fibrosis=Sirius red+面積/1視野面積x100を用いて、他の臨床データと合わせて検討した。 2群を(Ⅰ群:自己肝生存群(n=4), Ⅱ群:移植移行群(n=5))に分けると、異所性SOX9率はⅠ群が有意に高く(Ⅰ群:13.0% vs Ⅱ群:3.9%, P<0.05)、異所性SOX9率と%fibrosisに正の相関(r=0.78, P<0.05)を認めた。AUROCを用いて異所性SOX9率:10.9%をcut off pointとして2群(Ⅰ群:≧10.9%(n=3), Ⅱ群<10.9%(n=6))に分けKaplan-Meier曲線を作成すると、Ⅰ群が有意な差をもって自己肝生存率が高い事が分かった(Log-rank test, P<0.05)。 我々は、H25年度に胆道閉鎖症肝組織において、SOX9が肝細胞に異所性発現している現象を報告したが、今年度の研究により異所性SOX9の割合が胆道閉鎖症における自己肝生存に影響を与えている可能性が示唆された。SOX9が異所性発現している肝細胞は、胆管細胞や肝細胞に分化可能な肝前駆細胞と考えている。SOX9発現と線維化とが関連がある事も示唆され、次年度は、さらに症例を積み重ね研究を深める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り、胆道閉鎖症肝におけるSOX9発現細胞及び肝細胞におけるSOX9の異所性発現を同定することが出来ているが、肝細胞の上皮間葉移行(Epithelial Mesenchymal Transition: EMT)の可能性については、報告すべき結果が得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
胆道閉鎖症患者の葛西術時および移植時の病理組織を用いて、さらなるデータの蓄積を行い、異所性発現したSOX9の意義について検討したい。また、SOX9を異所性発現した肝細胞の上皮間葉移行(EMT)の可能性及び、SOX9を異所性発現した肝細胞の胆管細胞化生による増生細胆管の発生の可能性についても検討する。検討方法としては、免疫組織化学染色及び、増生細胆管の検討に関しては、レーザーキャプチャーマイクロダイセクションによりRNAを抽出して定量PCRによるマーカーの発現の比較を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用可能なサンプルの選別および多重染色の条件検討に時間を要し、今年度行う予定の研究に遅れが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫染色に必要な抗体の購入、および次年度のSox9の遺伝子変異の検索の測定費用に充当する予定である。また、今年度得られた研究成果を発表するための旅費としても申請する予定である。
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