研究概要 |
平成25年度はFACSにて小児固形腫瘍株を用いて、候補腫瘍幹細胞マーカーの表出の確認を行った。具体的には肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)、横紋筋肉腫細胞株(Rh30, KYM-1, RMS-YM, RD)、神経芽腫細胞株(LAN5)、ラブドイド腫瘍株(W4)についてFACSにより候補腫瘍幹細胞マーカー(CD13, CD44, CD44v, CD133)を同定した。腫瘍幹細胞マーカーの表出がみられる株においてはソート分離し免疫不全マウス(SCID-NOD)に移植して造腫瘍能を確認した。 1.現在までの研究実績:CD44では全ての腫瘍株で表出が確認された。しかし、一部の成人癌では腫瘍幹細胞と密接な関係があるとされているCD44vはいずれも小児固形腫瘍細胞株での発現はみられなかった(少なくともFACSにて確認できる限度以下であった)。これに対して、肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)ではCD13の表出がそれぞれ約50%,10%に認められ、現在 HuH6でCD13陽性細胞をSCID-NODマウスに移植してその造腫瘍能をCD13陰性細胞との比較を行っている。また横紋筋肉腫RD株はCD133陽性細胞の比率が高いため、分離・移植の実験を引き続き行ってゆく予定である。 2.考察:今研究では、2種類の肝芽腫細胞株において候補癌幹細胞表面マーカーであるCD13陽性細胞を認め、その高い造腫瘍能や抗癌剤抵抗性が示されればCD13陽性細胞が腫瘍幹細胞の性質をもつことが示される。現在、CD13陽性細胞阻害剤として医薬品のウベニクス(ベスタチン)、が臨床使用可能であるので、肝芽腫においてはCD13を標的とした腫瘍幹細胞に対する治療が可能となるかもしれない。組織幹細胞の一つであるLgr5も注目されるマーカーであるので全ての細胞株での表出を確認していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ肝芽腫にCD13陽性細胞が確認できたので、これからはCD13陽性細胞の肝芽腫治療薬である、CPA,VCR,THP-ADR,CDDPなどの抗癌剤への感受性、ならびに免疫不全マウスへの移植により腫瘍造成能を評価する。更には、CD13阻害剤(Ubenimex)の腫瘍造成能の抑制を評価する。 組織幹細胞の一つであるLgr5も注目されるマーカーであるので全ての細胞株での表出を確認していく。
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