研究実績の概要 |
研究目的:集学的治療によっても進行小児固形腫瘍の治療成績は生存率が低く治療抵抗性である。これら治療抵抗性小児固形腫瘍に対する化学療法、放射線療法の強化は極限に達しており、革新的な治療法の開発が喫緊の課題である。近年、腫瘍幹細胞の機能として活性化酸素(Reactive oxygen species:ROS)の蓄積抑制機能が注目されており、小児固形腫瘍においても腫瘍幹細胞マーカーを標的としてROS抑制阻害により腫瘍幹細胞に対しての新規治療の開発が可能である仮説をたてて以下の3点を目的として研究を遂行した。 1.小児がん細胞株(肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)、横紋筋肉腫細胞株(Rh30, KYM-1, RMS-YM, RD)、神経芽腫細胞株(LAN5)、ラブドイド腫瘍株(W4)ならびに臨床検体組織における腫瘍幹細胞マーカー候補(CD13, CD44, CD44v, CD133)をFACSにて解析すると、CD44は全ての腫瘍株で発現が確認され、横紋筋肉腫株や神経芽腫株の一部ではCD133の発現も確認されたが、成人癌で腫瘍幹細胞との密接な関係を指摘されるCD44vは小児がんでは多くのがん腫で発現が低いことが明らかにされた。 2.肝芽腫細胞株(HepG2, HuH6)ではFACSにてCD13の表出がそれぞれ約50%,10%に認められた。そのためHuH6株でCD13陽性細胞をソーティングし、SCID-NODマウスにenrichして移植した。bulk細胞では腫瘍を形成したのに対して1/10(1.0x104),1/100(1.0x103), 1/1000(1.0x102)のいずれのenrichに対しても16週経過しても腫瘍の形成はみられなかった。そのため肝芽腫の治療薬として期待されたCD13阻害薬(ウベニメクス)の効果の研究を進めることができなかった。
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