眼球移植における血管柄付き末梢神経移植を中心に、手術手技の確立と評価を行った。動物は主としてラットを用い、末梢神経のドナーは正中神経と顔面神経を用いた。網膜への直接の神経縫合は技術的に困難なため、強膜の小切開から神経断端を網膜下に差し込み、神経周膜を強膜に10-0、11-0ナイロンで縫い付けることで神経を埋入した。スリットをあける際に網膜が穿孔し硝子体が流出しやすかったため、手技的な改善を行った。またドナー神経の選択、挙上に関しても改善を行った。視機能の評価法としては対光反射が考えられるが、縮瞳させるためには動眼神経の縫合が必要となる。しかし動眼神経の露出は頭蓋底での剥離が必要なため、手技的に困難であった。 また血管吻合技術の改良を行った。小臓器移植において超微小血管吻合の際に、レシピエント側とドナー側の血管口径差が問題となる場合が多い。静脈に関しては血管の拡張性が高く、また血流が細→太のため血栓を生じにくいのに対し、動脈は拡張性が低い上に太→細への血流となるため血栓を生じやすい。同程度の口径の血管が術野に見つからないことも多く、存在しても剥離のため攣縮や損傷のリスクがある。動脈側端吻合法はこうした問題を解消できる方法ではあるが、過去の報告は大口径の血管についてのみの報告で、0.8mm以下の小口径動脈に関しての報告はなかったが、ラット大腿動脈に下腹壁動脈を11-0、12-0ナイロンにて側端吻合し、良好な開存性を保つことを確認した。本法は小臓器移植の血管吻合において有用な技法のひとつになると考えられた。 以上、小臓器移植としての眼球移植は視機能再建は現時点では困難であるものの、血流維持・生着という観点では手技的に可能であると考えられた。
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