本研究の目的は,悪性腫瘍切除に伴う続発性リンパ浮腫を発症しやすいと考えらているリンパ管低形成患者を悪性腫瘍切除前にスクリーニングし,リンパ節隔清後に実際にリンパ浮腫を発症したかどうかを確かめることである。 ヒトによる検証では,リンパ管低形成を評価する方法として,ICGクリランスメータを用いるスクリーニング法を検証し,ICGの検知までの時間に個体差を認めるという結果が得られた。この差がリンパ管低形成を反映したものであるかどうかはさらに検証が必要であり,その補助的な検証方法として,単一光子放射断層撮影(Sindle Photon Emission Computed Tomography: SPECT)を用いる機能的リンパ管の解剖学的な走行異常の有無によるリンパ管低形成の評価法の確立を試みてきた。同手法で解剖学的な走行異常(Minolity)は確実に検出可能であったが,これがリンパ管低形成とどの程度関与しているかはさらに検証が必要である。 また,ラットを用いる個体差の研究では,全身麻酔下にラット後ろ足抹消に投与したICGの流れを赤外線カメラによって観察した。個体差は確認できるが,主に走行の個体差のみが観察され,流速の個体差は判別困難で低形成を示唆する所見を絞り込むことはできなかった。 ヒトにおおけるリンパ管低形成が続発性リンパの発症に関与していることが定性的に示唆されるが,これを定量化するのは困難であり,実際にスクリーニングに用いるためにはさらなる検証が必要である。
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