研究実績の概要 |
ケロイドは、傷を修復する線維芽細胞がコラーゲンを異常産生し、細胞自身が異常増殖することが病因と考えられている。申請者らは、このケロイド発症経路に着目した研究を進めてきた。ケロイド抑制に重要な分子として、TGF-β, IL-6に着目し、その経路に対して、有望な分子標的治療薬であるHDAC阻害剤(OBP-801/YM753)とMEK阻害剤(trametinib)の組み合わせによる効果の検討を行うことを目的とした。 平成25年度はそれぞれ単剤によるケロイド線維芽細胞に対する効果を検討し、平成26年度にその二剤の組み合わせの条件検討を行った。HDAC阻害剤(OBP-801/YM753)単剤により、これまで報告されているTSAを用いた場合と同様に、細胞増殖抑制、コラーゲン合成抑制効果がみられたものの、MEK阻害剤併用併用でHDAC阻害剤単剤の効果を上回る併用効果はみられなかった。 一方で、HDAC阻害剤によるIL-6の抑制効果は認められなかったことから、平成27年度はケロイド発症経路とされるIL-6についても阻害効果を発揮し、かつより副作用が少ないことが期待されるphytochemical化合物がケロイド治療薬候補になりうるかについて探索した。その結果、phytochemical化合物XがIL-6経路およびSmad3を抑制し、ケロイド線維芽細胞の増殖およびコラーゲン合成を抑制することが判明した。さらに、ケロイド線維芽細胞とPBMCとの共培養系においても、ケロイド線維芽細胞の細胞増殖およびコラーゲン合成抑制効果をもつことも確認した。この化合物Xは他の癌治療に対する使用において、副作用が少ないことが示されてきており、今後、ケロイド治療薬として期待される可能性が示唆された。
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