研究課題/領域番号 |
25462806
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
磯貝 典孝 近畿大学, 医学部, 教授 (90203067)
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研究分担者 |
楠原 廣久 近畿大学, 医学部, 講師 (50388550)
諸冨 公昭 近畿大学, 医学部, 講師 (10388580)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノファイバー / PGA / 細胞播種 / 軟骨再生 |
研究概要 |
生体内分解吸収性の合成高分子において、PGA(ポリグリコール酸)は生体適合性に優れ、軟骨細胞との親和性(接着性)が高く、軟骨再生誘導における足場材料として長年の試用実績が知られている。しかし一般に使用されているPGA不織布(ネオベール®、平均繊維径20μm)は、播種細胞サイズに比較してPGA繊維径が大きく繊維間隔が広いため、播種細胞がPGA繊維に接着することなく漏出し、細胞播種効率が極めて低いことが大きな問題点として指摘されてきた16。この問題を解決するため、本研究では、PGAを本来の細胞外基質に近い微細構造をもつナノファイバーに加工・形成する技術を開発し、導入した。 組織再生用の足場材料では、適応組織により最適な材料形状や繊維径が存在することが予測されるが、この点に関する報告は認められない。そこで種々の繊維径を持つ細径PGA不織布を作製し、in vitroにおいて繊維径が細胞播種効率に及ぼす影響について比較検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ナノファイバーの代表的な3つの製造方法として、静電紡糸法(エレクトロスピニング法)、複合溶融紡糸法、メルトブロー法などが知られている。これらのナノファイバー製造法の中で、本研究ではメルトブロー法を用いて平均繊維径が0.5μm、0.8μm、3μm、および7μmのポリグリコロイドからなるナノファイバーPGA不織布を作成した。一方、平均繊維径が20μmの従来径PGA不織布は、紡糸された筒編み布をニードルパンチ法により不織布化する方法を用いて作成した。これらの不織布に、犬耳介軟骨細胞を播種し、走査電顕および光顕を用いて、不織布内における播種細胞の分布・細胞数を調べた。 その結果、0.5µm群では播種細胞が不織布表面に積み重なり、不織布内部には浸透していなかった。一方、従来径PGA不織布である20µm群では、播種細胞が繊維束周辺に散在性に分布し、いったん不織布内部に浸透した播種細胞の多くは不織布に接着することなく不織布より漏れ出した。これらの結果より、0.5µm群および20µm群では、播種細胞は不織布の外部に分布し、不織布内部における細胞密度は有意に低いことが判明した。一方、0。8µm群、3µm群、および7µm群では、播種細胞が不織布内部において比較的均一に分布し、有意に高い細胞密度が観察された。
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今後の研究の推進方策 |
(今後の推進方策) 平成25年度にえられた結果を基に、26年度は、2種類の複合型スカフォールド(平坦型および耳介型)を作製する。スカフォールドに軟骨細胞を播種した後、大動物(イヌ)自家移植モデルに移植し、ナノファイバーおよび従来径PGA不織布が軟骨再生誘導および長期形状維持に及ぼす影響について比較検討する。検討には、肉眼的、組織的検索法を用いる。実験プロトコール (1) 平成25年度の実験と同様に、イヌ耳介軟骨より軟骨細胞を単離し、スカフォールドに播種(最終播種濃度:100×106個/ml)する。次に、塩基性線維芽細胞増殖因子(b-FGF)徐を含浸させたゼラチン微粒子(Isogai N, et al: J Biomed Mater Res 74:408-418,2005)を投与して、細胞・スカフォールド複合体に徐放化システムを組み合わせる。 (2) 耳介軟骨採取時と同様に、全身麻酔を行ない、耳介軟骨細胞を採取した個体と同一の個体に上記の処理を行った細胞・スカフォールド複合体を自家移植(浅および深側頭筋膜の間)する。 (3) 移植後5および20週目に標本採取し、肉眼的、組織学的および力学的検討を行う。組織学的検討では、HE染色(一般性状)およびSafranin O染色(プロテオグリカン産生能)を行なう。 (次年度使用額が生じた理由と使用計画) 上記の実験プロトコールに基づき、動物、細胞培養器具、試薬、組織学的検討のための資料作成などの費用を予定しています。
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次年度の研究費の使用計画 |
組織標本作製費用が予想より安価ですんだ為。 薬品購入に使用予定。
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