研究課題/領域番号 |
25462808
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
河合 建一郎 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (80423177)
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研究分担者 |
西本 聡 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (30281124)
藤田 和敏 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (40461066)
垣淵 正男 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50252664)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 創傷治癒 / カルシウム動態 / イオンチャネル / 血清由来nanoparticle |
研究実績の概要 |
血清由来Nanoparticle(以下NP)は血清中の蛋白、核酸などにCa2+などのイオンが凝集したものであり、その分解・凝集能によって局所のCa2+動態を調節することで、線維芽細胞など創傷治癒過程に関わる細胞のセカンドメッセンジャーとしてのCa2+取り込みを変化させ、創傷治癒に影響を与えると考えられる。 当初の計画として、糖尿病で減少するAdiponectin蛋白を用いてNPを作成し(Adiponectin蛋白はカルシウム結合蛋白と結合するためNPのcoreとなり得る)、皮膚全層欠損創を作成した糖尿病マウスへの投与実験を行い、その創傷治癒過程を観察することを目的としていた。しかしながらGST結合Adiponectin蛋白を用いた大量精製がうまくいかず、この方法では研究が進まなかった。このため、創傷治癒過程のCa2+動態としてイオンチャネルの研究も同時に進めた。 Transient Receptor Potential (TRP)チャネルは外部環境情報を感知し、その情報をCa2+等のカチオン流入に変換するセンサー分子である。TRPC subtypeのうちTRPC3が皮膚創部、特に肥厚性瘢痕創部において発現上昇していた。肥厚性瘢痕は関節などの反復する刺激を受ける部位に好発する。このため線維芽細胞に反復伸展刺激を加えたところ、TRPC3の発現が上昇していた。さらにTRPC3過剰発現線維芽細胞を作成し、創傷治癒との関わりについて調査した。この結果、機械的伸展刺激によりTRPC3を通じてCa2+の細胞質内濃度が上昇、NFκBがリン酸化され、Fibronectinの発現が上昇することを突き止めた。また、TRPC3を過剰発現させた細胞とコントロール細胞では、伸展刺激を与えて得たconditioned mediumで作成されるNanoparticleの量に大きな変化があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度から取り組んできたAdiponectin蛋白の大量精製がうまくいかないため、方向性を変えてみたところ、当初の予定とはやや異なる方向ではあるが、カルシウム動態が創傷治癒に与える影響として成果を得ることができた。 Nanoparticleの主要な構成要素であるカルシウムは、様々な生物機能に関わっている。Nanoparticleは創部局所で生成・分解を通じて局所カルシウムホメオスタシスを制御すると考えられる。創傷治癒過程におけるカルシウム動態の解明が本研究の骨子であり、研究は概ね順調に進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、TRPC3過剰発現線維芽細胞を用いて、創傷治癒過程におけるカルシウム動態についての研究をカルシウムイメージングなどを用いて行う。また、これらの細胞を用いて作成したConditioned medium中に生成されるNanoparticleの性質を調査することで、細胞内の変化だけでなく、細胞外基質への影響(石灰化の起きやすさや、酸化ストレスへの影響など)についても研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
GSTタグ付きAdiponectin蛋白を用いて、Nanoparticleを作成し、糖尿病モデルマウスに投与して創傷治癒を観察する予定であったが、蛋白の大量精製が困難であった。蛋白作成段階で足踏みしていたため、予定額を使用しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
創傷治癒過程におけるカルシウム動態の解明のため引き続きNanoparticleの研究を続ける。ただし、Adiponectin蛋白の大量作成系の確立に拘らず、創傷治癒に強く関わると考えられるイオンチャネルとNanoparticleの関係を通じて創傷治癒過程におけるカルシウム動態の解明を目指す。具体的にはTRPC3過剰発現細胞を用いたConditioned mediumを用いてNanoparticleを作成し、創傷治癒にどのような影響があるかを観察する。 本研究の最終年度であり、論文としてこれまでの成果の発表を目指す。
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