研究課題
血清由来Nanoparticle(以下NP)は血清中の蛋白、核酸などにCa2+などのイオンが凝集したものであり、その分解・凝集能によって局所のCa2+動態を調節することで、線維芽細胞など創傷治癒過程に関わる細胞のセカンドメッセンジャーとしてのCa2+取り込みを変化させ、創傷治癒に影響を与えると考えられる。当初の計画として、糖尿病で減少するAdiponectin蛋白を用いてNPを作成し(Adiponectin蛋白はカルシウム結合蛋白と結合するためNPのcoreとなり得る)、皮膚全層欠損創を作成した糖尿病マウスへの投与実験を行い、その創傷治癒過程を観察することを目的としていた。しかしながらGST結合Adiponectin蛋白を用いた大量精製がうまくいかず、この方法では研究が進まなかった。このため、創傷治癒過程のCa2+動態としてイオンチャネルの研究も同時に進めた。Transient Receptor Potential (TRP)チャネルは外部環境情報を感知し、その情報をCa2+等のカチオン流入に変換するセンサー分子である。このうちTRPC3が皮膚創部、特に肥厚性瘢痕創部において発現上昇していた。肥厚性瘢痕は関節などの反復する刺激を受ける部位に後発することから、線維芽細胞に反復伸展刺激を加えたところ、TRPC3の発現が上昇していた。さらにTRPC3過剰発現線維芽細胞を作成し、創傷治癒との関わりについて調査した。この結果、機械的伸展刺激によりTRPC3を通じてCa2+の細胞質内濃度が上昇、NFκBがリン酸化され、Fibronectinの発現が上昇することを突き止めた。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Scientific Reports
巻: 5 ページ: 11620
10.1038/srep11620