研究実績の概要 |
心肺停止(CPA)はその発生場所が病院内・外を問わず,大多数が死の転帰をたどる最重症の病態であり,心肺蘇生 (cardiopulmonary resuscitation; CPR) により自己心拍再開 (return of spontaneous circulation; ROSC) が得られても,低酸素性の蘇生後脳症をはじめとした様々な病態変化に陥り,結果的に救命できないことが多い.そして,その救命率の向上及び神経学的予後の改善のためには高度な集学的治療を要する.近年,CPAのROSC後にみられる病態に,高サイトカイン血症を主体とした各種高メディエータ血症が関与しているといわれており,敗血症 (sepsis) の病態に類似していることから,sepsis-like syndromeとして注目されている.そしてCPRによりROSCを得ても,その多くが蘇生後脳症をはじめとした様々な病態変化 (心停止後症候群 (post-cardiac arrest syndrome; PCAS)) に陥り,結果的に救命できないことがある.その背景病態にsepsis-like syndromeが如何に関与しているかを検討する目的で,敗血症急性期とPCAS急性期を対象に,全血mRNAを用いた遺伝子発現を網羅的に解析・比較検討し,その経時変化も追跡した.そして,遺伝子発現プロファイルからみた各種病態 (敗血症とPCAS, コントロール),臨床経過や転帰との関連について検討した. また昨今,敗血症をはじめとする様々な重症病態に遺伝的因子が影響を及ぼしていることが報告されてきている.今回,免疫・炎症反応などに関与すると考えられる既知の56一塩基多型 (SNP) を搭載したチップをデザインした.そして,遺伝子多型による敗血症易罹患性や転帰への影響についても多施設研究検体を用いて検証した.その結果,ICU (intensive care unit) 転帰など,臨床経過に関連するSNPが確認された.
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