PAI-1ノックアウトマウス20匹に対して18G針にて盲腸穿刺結紮モデルを作成したところ、24時間死亡率が100%であった。この死亡率はヒトの如何なる報告より高値であるため、20G針にて穿刺を行ったところ24時間生存30%、1週間生存10%とヒト最重症敗血症と同様の予後であった。これらは既報の結果とほぼ変わらないデータであった。ワイルドタイプマウスに対して20G針にて、盲腸穿刺結紮施行したところ、24時間生存率60%、1週間生存率40%であった。このため、本研究にては20G針によるマウス盲腸穿刺結紮法をモデルとして使用することとした。抗炎症作用を持つ、PAI-1阻害剤投与を術後6時間後の血圧低下後に行ったところ、24時間生存率85%、1週間生存率75%と劇的な生命予後改善を認めた。同様の系に対して抗凝固作用を持つPAI-1阻害剤を投与したところ、24時間生存率75%、1週間生存率55%と有意ではないものの、予後改善傾向を認めた。本来抗凝固PAI-1阻害剤は予後を悪化させると予測していたため、両PAI-1阻害剤投与を行ったところ24時間生存率85%、1週間生存率65%と抗炎症性PA-1阻害剤単独と同様の改善傾向を認めた。また、肺・肝臓の組織像上阻害剤投与群は炎症が抑制されており、病理像からもマクロファージの浸潤が抑制されていた。以上から抗凝固作用が悪化因子であるという仮説が成立しないことが判明した。ノックアウトマウスの予後が劇的に不良である観点から、敗血症の発症初期に凝固が阻害されている点に問題があると考え、PAMPs、DAMPsの発現とPAI-1阻害剤投与による発症後の時系列的検討を行う予定であったが、研究代表者の退職により研究終了となった。
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