血中Neutrophil gelatinase-associated lipocalin (NGAL) は心停止後症候群の新たな生化学マーカーになり得るか?敗血症と類似した病態を呈する心停止後症候群の予後予測マーカーを確立することは重要な課題である。本臨床研究では、活性化した好中球から分泌されるNGAL(血中)と心停止後症候群との関連を調べ、予後予測マーカーとしての有用性を検証する。さらに、予後予測のためのカットオフ値を同定する。 平成25年度は健常人において血中NGALを測定するとともに、心肺停止以外の救急患者において血中NGALの測定を実施した。健常人の血中NGALはすべて100 ng/mL以下であったが、急性腎障害(AKI)、急性感染症、急性心不全など様々な病態で血中NGALが100 ng/mL以上の高値を呈していた。 平成26年度は当院救急外来を受診した救急患者45例について来院時の血液検体にて血中NGALを測定した。来院時の血中NGALは急性腎障害(AKI)のみならず、急性感染症でも高値を示した。 平成27年度は山口大学大学院救急・総合診療医学講座に研究協力を依頼し、蘇生に成功した院外心停止43例において血中NGALを測定し、予後予測バイオマーカーとしての有用性について検討した。第1および第2病日に血中NGALを測定し、神経学的予後良好(CPC 1-2:cerebral performance categories)と予後不良(CPC 3-5)の2群で比較検討し、血中NGAL値は第2病日に有意差を認めた。ROC解析では第2病日の血中NGAL値において予後不良予測のカットオフ値は304 ng/mL(AUC 0.83、感度 83%、特異度 85%)であった。本研究により心停止後症候群の予後予測において血中NGAL値の有用性が示唆された。
|