機械的陽圧換気による人工呼吸は呼吸不全患者の救命処置として必要不可欠であるが、その一方で機械換気による肺損傷が急性呼吸窮迫症候群(Acute respiratory distress syndrome: ARDS)を悪化させることが明らかとなり、人工呼吸関連肺損傷と称されている。本研究では、侵襲的人工呼吸が肺胞上皮の構造を破綻させることが人工呼吸関連は依存症のトリガーとなると仮定し、種々の研究を行ってきた。平成25年度にはラットを用いて侵襲的人工呼吸のモデル動物を作成した。平成26年度には上皮細胞を含む肺胞組織の細胞マーカーに対する免疫組織化学法を行い、その発現を確認した。これをうけ、本年は侵襲的人工呼吸を行ったモデル動物と行っていない対象群における上皮細胞マーカーの発現変化を免疫組織化学法、ウェスタンブロッティング、リアルタイムPCRを用いて検討した。モエシンおよびエズリンを上皮細胞のマーカーとして用いた。侵襲的人工呼吸によりこれらマーカーの発現が変化することが明らかとなり、人工呼吸関連肺損傷の早期診断に応用できる可能性が示された。
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