研究分担者 |
片山 映 日本医科大学, 医学部, 助教 (10333113)
松田 陽子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), その他部局等, 研究員 (20363187)
横田 裕行 日本医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60182698)
永野 昌俊 日本医科大学, 医学部, 講師 (60271350)
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研究実績の概要 |
マイクロ波は電磁波の一種であり、分子運動を活発することにより熱を産生する。マイクロ波は頭蓋骨を貫通し脳の深部に達することが知られているが、過度の照射による脳損傷の病態についてはほとんど解明されていない。 高出力のマイクロ波をラットの脳に照射した脳損傷モデルを作成し、脳損傷の病態を病理組織学的に検討した。ラットの頭部に3.0kWのマイクロ波を0.1秒間照射し、照射後1,3,7,14,28日にそれぞれ3頭ずつ、ホルマリンで灌流固定し脳を摘出した。照射した31頭のラット中、最終的に15頭が死亡(48.4%)した。摘出した検体に対し、H-E染色およびアポトーシス検出の指標であるTUNEL法で染色を行い、大脳皮質運動野、海馬(CA1およびCA2)、側脳室脈絡膜について神経細胞数の変化とTUNEL陽性細胞の割合を計数した。神経細胞数の評価では、CA1において28日後に神経細胞数は有意に減少し(60.6±1.9 vs 50.6±5.8, P=0.0358)、その他の部位において神経細胞数の減少は認めなかった。TUNEL法よるアポトーシスを生じた細胞の割合は、側脳室脈絡膜において7日後に有意に増加したが(2.1±1.1 % vs 21.8±19.2 %, P=0.0318)、その他の部位においては増加しなかった。側脳室脈絡膜と脳室周囲が特異的に傷害された動物モデルとしてblast injury(爆傷)による脳損傷が報告されており、マイクロ波照射による外傷性能損傷と病理組織学的な共通点が見出され、近年遅発性の神経障害を生じ米国を中心として大きな話題となっているblast injuryによる脳損傷モデルとなり得る可能性も示唆された。 本脳損傷モデルは、マイクロ波発生装置を用いて出力を調節することにより、量的に再現性の高い脳損傷モデルを作製可能で、blast injuryに類似した新しい脳損傷モデルの可能性が示唆された。
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