研究実績の概要 |
目的)出血性ショックにおける腎の虚血再灌流障害の発生機序として、単球により産生されるTNF-αは重要な役割を果たすことが示されている。 本研究ではTNF-αの転写因子のひとつであるEarly growth response factor(Egr)-1が、マウスの虚血再灌流性腎障害の発生にどのように関与するかを明らかにし、これをターゲットとした治療の可能性を検討することを目的とした。 研究内容)C57BL/6J 雄マウス(8週~12週)を用い、麻酔後、腹部正中切開で開腹し、右腎臓を摘出後、左腎茎部において血管鉗子を用いて45分間の虚血を行い、これを解除し再灌流を行った。再灌流後6,12,24、48時間で腹部大動脈より採血および左腎の摘出を施行し、BUN, Cre値の測定とH.E染色による組織学的評価を行った。12時間以降においてBUN, Cre値の有意な上昇と急性尿細管壊死像を認めた。また、摘出された虚血再灌流後の腎組織中のTNF-αのERISAによる解析では、再灌流後3時間以降で有意な上昇を認めた。ウエスタンブロットによる腎組織中のEgr-1の解析では、再灌流後60~90分においてEgr-1の発現の促進が認められた。これらのことから、マウス腎虚血再灌流障害モデルによって、Egr-1の発現が促進され、TNF-αの産生を促進し、腎虚血再灌流障害によるBUN, Cre値の上昇を引き起こす可能性が示唆された。 今後の課題としては、Egr-1のアンタゴニスト、あるいはノックアウトマウスの使用などによって、Egr-1の発現を選択的に抑制した場合、腎虚血再灌流障害が軽減されるかどうかについて検討が必要と考えられる。
|