研究実績の概要 |
本研究の目的は、ラットを用いて、水素吸入療法が出血性ショック蘇生後肺障害に効果を示すかどうか、もし効果を示すのであれば、そのメカニズムは何か、を解明することである。平成27年度は1時間の出血性ショック中および蘇生後、1.3%水素21%酸素77.7%窒素の混合ガスを吸引させた水素群と、21%酸素と79%窒素を吸引させた窒素群、及びショックを行わないsham群を作成し、蘇生後の効果を評価した。動脈血のPO2はsham群に比べ窒素群で低下する傾向を示したが水素吸入群で有意に改善し、sham群に近い値が得られた。また、 Lactateはsham群に比べ窒素群で増加したが、水素吸入群で有意に減少した。PaCO2はいずれの群でも差は認められなかった。肺組織のHE染色で肺障害スコアは、窒素群で増加したが、水素群で有意に低下し、ナフトール染色を用いた肺の好中球数でも、水素群で有意に好中球数が減少していた。脂質の過酸化を示すマーカーであるマロンジアルデヒドもsham群に比べ窒素群で増加したが、水素群で有意に改善した。mRNAによる解析では、TNF, IL-6, IL-1b, iNOS, ICAM-1, CCL2はsham群に比べ窒素群で増加し、蘇生後1時間のTNF、及び蘇生後3時間でのIL-6, IL-1b, iNOS, ICAM-1, CCL2を水素群は有意に改善した。また、水素群では核内のNF-kB p65が減少しており、NF-kBの経路による機序が確認できた。以上より、ラットを用いた水素吸入療法は出血性ショック後の肺障害に有用であることが示された。
|