研究課題/領域番号 |
25462841
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
小谷 穣治 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (80360270)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | IL-18 / 一塩基多型 / 性差 / 好中球 / 敗血症 |
研究概要 |
本研究は重症救急疾患における侵襲反応の個体差に基づく個別化医療を目指し、個体差の機序を、IL-18 を中心に遺伝子多型や性別と重症度との関連を見ることで病態別に検討し、新しい診断マーカーの発見および性差に基づく治療標的としてのIL-18 の可能性について検討するものである。 平成25年度は主として過去に採取した70検体を用いて解析を行った。結果、救命救急センター搬入時の血中IL-18濃度はAcute Physiology and Chronic Health Evaluation II (APACHE II) スコアと正の相関を示し、生存例よりも死亡例では血中IL-18濃度が有意に高いことが明らかとなった。このことから、IL-18濃度の増加は生存率悪化に関与する可能性が示唆された。IL-18の一塩基多型解析では、-607/-137の遺伝子型はAA/CCが2名、AA/GCが7名、AA/GGが14名、CA/GCが12名、CA/GGが22名、CC/GGが13名であった。このうち、CA/GCまたはCA/GGの場合に血中IL-18濃度が生存例に比べ死亡例で有意に高いことが明らかとなった。さらに、健常成人13名より単核球を抽出し、エンドトキシン刺激を加えて上清のIL-18濃度を測定した。-607/-137の内訳はCA/GGが6名、AA/GGが3名、CC/GGが4名であった。結果、CA/GGまたはAA/GGの場合、エンドトキシン刺激によりIL-18濃度が有意に増加した。以上の結果より、IL-18-607CAを有する患者についてIL-18濃度が増加しやすい可能性があり、病態の重症化に関与するのではないかと考えている。70名の病態別、性別の検討ではn数が少なく、有意な差は見られなかったため、今後検体数を増やしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では研究期間内に以下の4点について明らかにするものとしている。 1. 重症救急症例における血中IL-18 濃度の経時的変化を病態別、重症度別、性別について明らかにする 2. IL-18 の遺伝子多型解析を行い、IL-18 の濃度変化や病態、重症度と遺伝子多型との関連を明らかにする 3. IL-18 の遺伝子多型と性差が好中球などの自然免疫細胞の機能変化に及ぼす効果を検討する 4. IL-18 が救急領域における新しい診断マーカーまたは治療標的として機能し得るかを検討する このうち、平成25年度では、1および2と4について検討を開始することが出来たため、概ね順調と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の検討では病態別、性別の解析を行ったものの、n数が少ないため、有意な差は見られなかった。平成26年度以降は検体数の確保に重点を置いて研究を進める必要があるが、十分な検体数には至らない可能性もあるため、検体数の多い敗血症に絞って詳細な検討を進めることや、健常人ボランティアから末梢血を採取し、in vitroでエンドトキシンなどの刺激を加えるといった検討も必要であると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は新たに採取した検体数が少なく、過去の検体を主として解析したことから、予定していたよりも使用した消耗品や試薬が少なかった。また、予定していた学会への参加が行えなかったことも理由としてあげられる。 平成26年度では検体採取とその解析が重要であると考えている。その原因としては十分な人員が確保できなかったことが一因としてあげられることから、解析に必要な人員を確保し、その謝金に充てる予定である。また、学会にも積極的に参加し、論文作成に必要な最新知見を深める必要があると考えているため、学会参加費などに充てる予定である。
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