研究課題
近年、重症敗血症患者は毎年数千万人が罹患し、現在その数はさらに増加傾向にある。生存者でも肉体的あるいは精神的合併症によって日常生活が制限され、特に脳症の発症は死亡率を上昇させ、また生存者においてはICU退出後も続く認知機能障害に関連した社会的問題が生じている。我々は昨年度までにマウス敗血症モデルにおいてエストロゲン、L-キヌレニン投与がが生存率に寄与することを発表した。一方それらの実験過程で、敗血症において動物実験から得られた知見が臨床治療に反映できた結果は少ないことに疑念を感じた。申請者らは敗血症研究のゴールドスタンダードと考えられている盲腸結紮穿孔(CLP)モデルの欠点を克服できる「改良型新規マウスCLPモデル」の作成に成功した(Niiyama et al. Clinical & Translational Immunology 2016)。CLPモデルを使用した実験結果は、CLPモデル作成中のさまざまな因子(盲腸穿孔の数や針孔の大きさ、また盲腸の結紮部位よりも末端の圧、動物宿主反応の不均一性の問題、すなわち、宿主の免疫応答が膿瘍形成を促すなど)に強く依存し、特に腹腔内膿瘍形成は大きな欠点の一つである(Dejager et al. Trends Microbiology 2011)。申請者らは腹腔内脂肪組織がモデル動物の生存率に強く関与するという仮説を立て、脂肪組織を切除した「改良型新規マウスCLPモデル」と従来モデルの生存率を比較検討したところ2群間で有意差を認めた。また、新規モデルは、従来モデルに比べて術後12時間後の血中IL-6値が有意に高く、生存率の差を支持する知見を得た。これらの結果は、従来モデルに比べ敗血症の病態をより確実に作成できることを示唆する。今後は本モデルを使用して実験を継続する予定である。
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Clinical & Translational Immunology
巻: 5 ページ: e64
10.1038/cti.2016.3