研究課題/領域番号 |
25462844
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研究機関 | 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究 |
研究代表者 |
齋藤 大蔵 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 教授 (90531632)
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研究分担者 |
武岡 真司 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20222094)
小野 聡 東京医科大学, 医学部, 教授 (30531355)
宮崎 裕美 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 防衛医学研究センター, 助教 (30531636)
木下 学 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, 医学教育部医学科専門課程, 准教授 (70531391)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 機能性ナノシート / 抗菌性 |
研究実績の概要 |
皮膚全層熱傷の植皮による治癒効果は創部の感染制御に左右される。昨年度までの研究課題で用いたナノシートは創部に密着することで外界からの細菌との接触を阻害するがそれ自体に抗菌能はなく、完全には菌の透過・増殖を阻止できない。そこで耐性菌の出現がなく感染制御に有効とされる銀の抗菌効果に着目し、スルファジアジン銀を担持させたナノシートを作製し、熱傷創の感染制御効果について検討した。①銀ナノシートの性能を評価するために、経時的な銀イオンの徐放能を測定した。また、熱傷創感染の代表的な起炎菌であるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に対する抗菌能を評価した。②マウスの背部にII度熱傷創を作製した後MRSAを播種した熱傷創感染モデルに対する被覆材としての有用性を検証した。その結果、銀ナノシートは膜厚に依存して銀イオンの放出速度を制御することができ、MRSAに対して持続性のある抗菌効果が観察され、銀ナノシートが機能性を有したナノシートであることが示された。銀ナノシートを熱傷創MRSA感染モデルに貼付したところ、感染創の菌数を劇的に減少し、創部の炎症を軽減することが示された。また、炎症反応から組織修復の過程で分泌される細胞増殖因子を用いた組織再生における有用性が多数報告されている。そこで、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)担持ナノシートを作製し、創傷治癒促進に与える影響をマウス皮膚潰瘍モデルで検討したところ、対照群と比較し創傷治癒率がbFGFナノシート群では良好であり、新生肉芽も有意に厚く高い創傷治癒促進効果が確認された。以上のことから、感染リスクを低減し創傷治癒を促進する機能性ナノシートは、熱傷治療に有用な被覆材になり得ると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロスキンとナノシートを用いた治療法開発研究は今後に期待できると思料するが、免疫機能の低下した広範囲熱傷患者に対する治療において、植皮後の創部感染を制御することが重要と考えられる。今年度はナノシートに感染制御能や細胞増殖活性促進能をもたせた機能性ナノシートを作製し、創部の感染制御や創傷治癒率について検証し被覆材としての有用性が認められ、研究成果が英文専門誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
皮膚全層熱傷に対し、早期の上皮化を促す治療法の確立を目指し、感染の制御や血管の構築に焦点を当てて研究を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画していた解析に必要な試薬を購入しなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果を国内および国外の学会で発表するための学会参加費用、英文専門誌に論文を投稿するための英文校正費としても研究費を用いる。
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