研究課題/領域番号 |
25462845
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
太田 彦人 科学警察研究所, 法科学第三部, 室長 (40392261)
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研究分担者 |
櫻田 宏一 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 教授 (10334228)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アセチルコリンエステラーゼ / 脳内活性回復 / 4-PAO / サリン類似体 / サリン阻害ラット |
研究実績の概要 |
これまで我々が開発した血液脳関門(BBB)通過性オキシム4-PAOの持続静注により,サリン中毒ラット脳内の阻害されたアセチルコリンエステラーゼ(AChE)を直接回復できるかどうか検討した.サリン阻害ラットは,これまで我々が開発した安定で安全なサリン類似体INMPを0.15mg/kg単回静注することにより調製した.サリン阻害ラットの脳内AChE阻害率の平均値は,コントロールラット(100%)に対し87.5%±2.3%(n=5)であった.このサリン阻害ラットに,4-PAOを2mg/kg/hの速度で0(ネガティヴコントロール),1,3,8mg/kg持続静注投与した.また同時にアトロピン0.4mg/kgを20分かけて持続静注した.INMP投与から4時間20分後に,ラット脳内AChE活性を測定した.活性測定は,AChEに特異的な試薬であるMATP+を用いて行った.その結果,ラット脳内AChE活性は,4-PAOの1mg/kg投与群では12.5%から+8.8%±5.1%(3.8%~15.3%,n=5,P<0.01),3mg/kg投与群では+21.4%±6.6%(15.6%~31.2%),8mg/kg投与群では+12.5%から66.8%±12.3%(56.3%~81.2%,n=5)の回復が見られ,4-PAOの投与量に応じた定量的な回復が見られた.最終的に8mg/kg投与群では脳内活性が79.3%(68.9%~93.8%)に達した.4-PAOの0mg/kg投与群は,INMP投与から4時間20分後でも痙攣及び起立不能の症状が持続したが,1,3,8mg/kg投与群ではこれらの症状は消失し,特に8mg/kg投与群では歩行する等ほぼINMP投与前の状態に回復した.BBB通過性オキシムの持続静注による,サリン阻害ラット脳内AChE活性の定量的な回復は,これが初めての報告となる.
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