研究課題/領域番号 |
25462846
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 裕子 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 学術研究員 (90646118)
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研究分担者 |
大賀 則孝 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40548202)
秋山 廣輔 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 客員研究員 (10609100)
間石 奈湖 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 特任助教 (00632423)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | がん幹細胞 / 腫瘍血管 / トランスポーター |
研究実績の概要 |
平成26年度はin vitroにおける抗がん剤とトランスポーター阻害剤併用療法の有効性を検討した.具体的にはin vitroにおいて腫瘍血管内皮細胞の抗がん剤に対する抵抗性がP-gp阻害剤でキャンセルされるかを検討した.トランスポーター阻害剤もベラパミル,レセルピン,PSC833など複数種類使用し,in vitroで増殖能,血管新生能を解析し血管新生阻害療法上,有効な治療法を検討した. in vivoにおける抗がん剤とトランスポーター阻害剤併用療法の有効性の検討: マウス腫瘍皮下移植モデルにおいてin vitroでの検討で挙がったトランスポーター阻害剤を用いて,抗がん剤単独投与群と比較し抗がん剤との併用療法でより抗腫瘍効果が得られるか検討をおこなった.その結果,ベラパミルとパクリタキセルに併用することにより,低濃度のパクリタキセルに対する治療感受性がベラパミル併用により有意に高くなることを見出した.また,腫瘍の成長も抑制され腫瘍血管新生阻害効果もCD31染色により明らかになった.また肺への転移に関しても抑制された.なお,これらの結果は5-FUとベラパミルの組み合わせでは得られず,ベラパミルが確かに腫瘍血管のトランスポーターの阻害を介してトランスポーターにより排出されるパクリタキセルの治療効果を選択的に増強したことが確かに示された.これらのことから,腫瘍血管のトランスポーターの阻害は抗がん剤感受性を高めより副作用の出現しにくい低用量の抗がん剤の治療への応用が可能であることを示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腫瘍血管内皮におけるトランスポーターの抑制in vivo の腫瘍モデルにおいて検証し,仮説のとおり抗血管新生作用を見出すことができた.
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今後の研究の推進方策 |
ヒト臨床検体における腫瘍血管の薬剤耐性関連トランスポーターの発現と予後との統計解析を進める.共同研究を行っている臨床講座から臨床検体サンプルを供与していただき,組織免疫染色によって腫瘍血管内皮の薬剤耐性関連トランスポーター発現量を網羅的に解析し,正常血管との比較検討,および各症例のがん悪性度,抗がん剤に対する治療抵抗性,予後との相関について統計解析をおこなう. さらに,がん細胞と腫瘍血管内皮細胞の相互作用について,培養上清を用いてあるいは共培養を行い,薬剤抵抗性や未分化能の維持などを解析する予定である.また,腫瘍血管内皮細胞が特異的に発現する分泌タンパクおよび膜表面タンパクを同定し,それらのがん細胞に対する影響を解析する予定である.また,腫瘍血管内皮細胞におけるトランスポーターの発現メカニズムについても,上述の共培養や培養上清を用いた実験により検証を進める予定である.また,ABCトランスポーターは幹細胞のマーカーでもあることから,腫瘍血管のトランスポーターが発現していることが腫瘍血管内皮の異常性にどのように関わっているのかについても検討する予定である.例えばこれまでわれわれが見出してきた,腫瘍血管内皮細胞の骨分化能や幹細胞性,さらには血管新生能にもどのように関与しているのかについても検証する.この様な研究で明らかになった分子を標的とした治療もin vivo siRNA送達システムによって試みる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に行う予定だったマウスを用いた実験について、細胞の準備に時間を要したため。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞は既に準備ができているため、4月より速やかに実験を進める予定である。
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