研究課題/領域番号 |
25462850
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
稲葉 裕明 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70359850)
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研究分担者 |
野田 健司 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (00290908)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | P. gingivalis / 口腔癌 / シグナル伝達 / 癌浸潤 |
研究概要 |
近年、広汎な疫学研究によって、歯周病と口腔癌の発症・進行の有意な関連が報告されている。しかし、歯周病菌感染に対する口腔癌細胞の細胞生物学的応答に関する知見は未だ不十分である。そこで、本年は、歯周病原菌Porphyromonas gingivalisのヒト口腔癌細胞の浸潤能への影響について検討を行った。 P. gingivalis 33277株をヒト口腔扁平上皮癌細胞株(SAS細胞)に感染させ、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)9活性への影響をザイモグラフィーにより評価した。また癌浸潤能はマトリゲルインベージョンアッセイにより測定した。プロテアーゼ活性型受容体(PAR)2受容体の発現は、real-time PCRを用いて評価した。 P. gingivalis感染により、SAS細胞のMMP9が活性化されるとともに、癌浸潤能が促進された。またPAR2受容体の遺伝子発現も促進されていた。そこで、PAR2受容体がMMP9の発現に影響を及ぼしていることから、PAR2受容体の下流に存在するシグナル伝達経路を同時に評価した。P. gingivalis感染の口腔癌細胞への感染によりPAR2受容体がNFkN経路を介してMMP9を介して癌浸潤能が亢進されることが示唆された。 現在、P. gingivalis感染により、SAS細胞のMMP9発現に関与する、他のシグナル伝達経路について詳細に検索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PAR2受容体/NFkB/MMP9経路が確定できたこと。さらにMMP9発現に関与するシグナル伝達経路が予期できている。さらにMMP9を活性化する菌側の要因も決定できそうである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、現在継続中であるシグナル伝達経路を詳細を解析する。特にどの受容体からシグナル伝達が働き、MMP9発現に関与するかを検討する。細胞外に分泌された前駆体MMP9がどの因子で活性化するかを、P. gingivalis遺伝子変異株を用いて検討する。シグナル伝達経路の同定ならびに細菌側の因子が決定次第、予防対策に用いることが出来る素材を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本課題において、シグナル伝達経路を検索していく内に、複数の経路が活性化していることが明らかになった。そのため、現在発見した以外のシグナル伝達経路を詳細に検討するために、次年度使用を必要とする。 western blotによりシグナル伝達経路を網羅的に解析する。検索した分子のノックダウン細胞を作成し、MMP9発現との関連性について詳細な検討を行う。 さらに、P. gingivalis遺伝子変異株を作成し、前駆体MMP9の活性化に関与する細菌側の病原因子を同定する予定である。
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