口腔領域における細胞診の普及率は現状ではまだ低いが、癌を早期発見するための1つの方法として、歯科診療の場や口腔がん検診等で用いられるようになってきている。本研究では、口腔粘膜擦過細胞診で得られた検体から、細胞形態学的・免疫組織化学的解析等により、細胞診断システムを構築することを目的とする。 平成26年度までに、大阪大学歯学部附属病院の病理診断データベースから抽出した歯肉扁平上皮癌症例を用いて、癌関連タンパクや増殖マーカーに関する免疫組織化学的所見について解析を行い、まとめた結果を「口の難病プロジェクト・2014年度成果報告会」にて発表した。細胞診については、他施設との共同研究で「細胞診の正診性に関する研究」として、423例の標本について細胞診専門医11名で再検鏡し、結果の解析を行い、現在成果をまとめて論文投稿中である。 平成27年度は、免疫染色に使用した癌関連タンパクの中から、Galectin-1という内在性レクチンタンパクに着目し、転移や予後、そして腫瘍免疫との関連について解析を行い、「第26回日本臨床口腔病理学会」、「International Symposium 2015 Oral and Craniofacial Development and Diseases」にて発表した。細胞診については、前年度から共著者として執筆を行っていた「細胞診ガイドライン5消化器」(金原出版)が発行され、口腔細胞診の新たな診断基準を示した。また、Galectin-1については、細胞診断における有用性についても解析を行い、「第54回日本臨床細胞学会秋期大会」で発表し、論文にまとめた(Human Pathology 2016;52:101-9)。
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