研究課題/領域番号 |
25462853
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
池亀 美華 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70282986)
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研究分担者 |
河井 まりこ 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (40379839)
服部 淳彦 東京医科歯科大学, 教養部, 教授 (70183910)
山本 智章 新潟医療福祉大学, 公私立大学の部局等, 転倒防止研究センタ-所長 (30445902)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メラトニン / メラトニン受容体 / 骨細胞 / 骨組織 |
研究概要 |
本研究の最終目的は、松果体ホルモンであるメラトニンを用いた、骨形成促進機構に基づく、副作用の少ない、より効果の高い、新たな骨疾患・歯科治療法開発の基盤を作ることである。そのため、様々な条件下での骨・歯周組織におけるメラトニン受容体の発現局在を明らかにし、メラトニンの骨組織への作用機序を解明する。さらに、機械的刺激とメラトニンの骨形成促進作用の相乗作用の可能性について組織細胞レベルでの解明をめざす。H25年度実施内容 ・マウス、ラット、ヒト骨試料についてパラフィン切片、凍結切片を作成し、抗MT1、抗MT2抗体を用いて免疫組織化学を行い、組織内局在を検討した。MT1の検出は困難であった。MT2は骨細胞、骨髄中の単核細胞、骨表面の一部の間質系細胞、軟骨細胞の一部などに陽性反応が検出された。 ・各種マウス(ICR、C56Bl/6J、C3H/)、ラット(WistarSD)の、頭蓋骨、下顎骨、長管骨について、各種メラトニン受容体(MT1, MT2, RORα)の遺伝子発現量をリアルタムPCRによって検討した。検討にあたり、RNA採取法、cDNA作成法、リアルタイムPCRの反応系(温度、ステップ数、試薬などの条件)、装置内でのばらつきの有無、プライマー設計、などの条件検討を綿密に行った。結果、検討に用いた2~6日齢の実験動物では、MT1, MT2の遺伝子発現量はかなり少ないこと、RORαの発現量はそれらより多いこと、マウスの種別間、マウスとラット間での発現量の差は大きくないこと、などが明らかになった。 以上の結果から、骨組織では主に骨細胞にメラトニン受容体が発現している可能性が示された。骨細胞は近年骨代謝において骨形成、骨吸収の両方を調節し、機械的刺激受容応答機構にも大変重要な役割を果たしていると考えられていることから、この成果の意義は大きく、より厳密に検討してゆく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨組織における免疫組織化学的局在検索については、抗体一種類についてしか検討しておらず、複数の抗体による検討が必要と考える。 動物種、年齢、性別によるメラトニン受容体の遺伝子発現差の検討について、骨での発現量が予想以上に少ないと考えられ、量差を検討できるだけの安定した検出条件検討に思いのほか時間を要した。そのため他の年齢、性別による発現差についてまでの検討に至ることができなかった。これらの点については計画よりも遅れている。 しかしながらその一方で、ヒト試料が予定より早く入手でき、検討を始めることができた。従って、おおむね順調とした。
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今後の研究の推進方策 |
・リアルタイムPCRの条件設定がほぼ決まってきたので、他の年齢、性別による発現差がないかについて検討を進める。 ・免疫組織化学については、他の抗体をもちいて同様の局在を検出できるかさらに検討する。またin situ hybridizationによっても発現局在を検討する準備に入る。 RORαの遺伝子発現量が予想以上に多いため、免疫局在を検討する。 ・以上の基礎的データを元に、機械的刺激を加えた系でのメラトニ受容体発現変化を検討する。そのため、頭蓋骨縫合部伸展刺激系、Waldo法による歯牙移動実験系の準備に入る。 ・次年度の研究費は、以上の計画を推進するため、実験動物、リアルタイムPCR関連試薬、免疫組織化学、in situ hybridization用試薬などの他、学会参加費、研究打合せ旅費、共同実験室使用量、小荷物運送料などに割り当てる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
骨組織中のメラトニン受容体発現量の検討で、リアルタイムPCRの条件設定がなかなかうまく進まなかったため、使用予定であった実験動物、ならびにリアルタイムPCR試薬、施設使用料を使えなかったことが最大の理由である。 年度末にPCRの条件がほぼ決まってきたので、次年度ではこの遅れをとりもどすべく、各年齢、性別、種別動物からのRNA抽出、リアルタイムPCRを実施する。 平行して免疫組織化学的局在検出を、新たな抗体を用いて検討するとともに、in situ hyubridization によって複合的にメラトニン受容体の骨組織内局在について詳細に検討する。
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