研究課題/領域番号 |
25462854
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
北川 雅恵 広島大学, 大学病院, 助教 (10403627)
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研究分担者 |
高田 隆 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10154783)
宮内 睦美 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (50169265)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | F-spondin / 骨芽細胞 / 炎症性サイトカイン / ペプチド |
研究実績の概要 |
これまでの研究でF-spondinが歯周組織ではセメント芽細胞にのみ発現し、セメント芽細胞の分化や抗炎症作用に関与することを明らかにしてきた。昨年度は、F-spondinを骨芽細胞に過剰発現させ、骨芽細胞に対する抗炎症作用について検討を行ったところ、F-spondin過剰発現細胞では歯周病原細菌LPSの刺激に対して発現するIL-6やTNF-αの発現が抑制され、培養上清中に発現するPGE2の産生量も低下させることやF-spondinトランスジェニックマウスを用いた根尖性歯周炎モデルでも好中球浸潤や歯槽骨吸収が抑制されることが明らかとなった。また、追加の実験でF-spondin過剰発現ST2細胞ではIL-6の発現低下が認められた。F-spondinは通常、外分泌タンパクとして知られていることから、平成26年度は合成ペプチドを作製し、骨芽細胞に対する抗炎症作用について検討を行った。 F-spondinペプチドをにより、F-spondin過剰発現時にみられたTNF-αの変化は骨芽細胞株であるMC3T3E-1細胞およびST-2細胞でいずれも認められなかった。IL-1βおよびIL-6についてはF-spondinペプチド単独でも発現が増加し、歯周病原細菌(A.aおよびP.g)のLPSは単独刺激の時に比べて発現が増強された。さらに、培養上清中のPGE2の産生量についても同様にF-spondinペプチド単独で産生量は増加し、LPS刺激でもF-spondinを全処理したものより産生量が増加した。 以上の結果より、F-spondinペプチドはin vitroにおいて骨芽細胞では抗炎症作用を示さず、逆にLPSの作用を増強すること示された。つまり、F-spondinの抗炎症作用は骨芽細胞において外分泌タンパクとしてではなく、細胞内で発現し、作用することでその作用を発揮する可能性が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の目標であるF-spondinペプチドを用いた骨芽細胞の抗炎症作用に対するin vitroでの検討は概ね達成され、昨年度の結果と併せてF-spondinの抗炎症作用は細胞外からの働きではなく、細胞内で発現することが重要であることが明らかとなった。破骨細胞誘導因子については実験が不十分であるため、再度検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度ペプチドでの抗炎症作用が期待できると仮定して、次年度in vivoでのペプチドを用いた検討を計画していたが、研究計画を一部変更し、F-spondinの骨芽細胞での抗炎症作用について細胞内発現を中心に検討を行っていく予定である。
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