研究課題/領域番号 |
25462855
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮内 睦美 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 准教授 (50169265)
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研究分担者 |
古庄 寿子 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (00634461)
高田 隆 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 教授 (10154783)
犬伏 俊博 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (30550941)
兵庫 秀幸 広島大学, 大学病院, 病院助教 (40397930)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯性感染 / 全身疾患 / NASH / 肝障害 / 歯周病 |
研究概要 |
Porphyromonas gingivalis (P.g.)歯性感染が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の病態進行に及ぼす悪影響を明らかにすることを目的とし実験をおこなった. 1. in vitro での検討:①P.g.感染は脂肪酸やリポ蛋白の取込関連遺伝子(FATP, LDLR)やサイトカイン(IL-6, MCP-1)発現を上昇させた.②脂肪化によりP.g.細胞内取り込みに関する受容体Integrinα5、β1発現は増強し,P.g.感染量が増加した.一方で,③脂肪化肝細胞ではTLR2やFATP, LDLR発現が上昇し,P.g.-LPSによるサイトカイン産生が増強した.④P.g.感染回数増加に伴い FATP, LDLR,脂質合成系(FAS)の発現上昇と脂質分解系(CTP-1)発現抑制が生じ,脂質沈着が増加した. P.g.感染やP.g.-LPS刺激は肝細胞の脂質代謝に影響し,その脂肪化を促進する一方で,脂肪化肝細胞では integrinやTLR2発現上昇を介し,P.g.感染量やP.g.-LPSに対する感受性が増加する.このようにNASH患者の肝臓ではP.g.,P.g.-LPSや脂質の相互作用による悪循環が成立し,NASHの病態進行に関わると推察される. 2. In vivo での検討: Pg-LPSの受容体であるTLR4-Koマウスを用い,P.g.歯性感染の影響について調べた.組織学的にTLR4欠損はP.g.歯性感染により誘導される脂肪化や炎症の増悪に影響しなかった.よって、P.g.歯性感染によるNASHの病態進行過程にTLR4経路はあまり重要な経路ではないと考える. 3.ヒト肝生検材料におけるP.g.免疫組織化学的検出については解析中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目はin vitroの解析でP.g.-LPSのサイトカイン発現に及ぼす作用とP.g.感染が肝細胞の脂質代謝に及ぼす影響についてP.g.-LPS, P.g.感染と脂質の悪影響という興味深い結果を得た.動物実験では主にTLR4Koを用いた感染実験での解析を行い,TLR2, TLR4の両者を受容体とする特殊なLPSを有するP.g.の歯性感染に関してはTLR4を介する経路はさほど重要でない可能性を明らかにし,25年度に計画したことはほぼ達成できている.TLR2KoマウスやTLR2/TLR4 Koマウスでの実験結果も解析中である.ただし,ヒトの肝生検を用いた免疫組織化学的検討が少し遅れているのが現状であるため(2)とした.
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今後の研究の推進方策 |
P.g.の肝細胞への感染が肝細胞の増殖や脂質代謝に大きな影響を及ぼすため感染細胞と非感染細胞とで網羅的解析を行い,そのメカニズムについての可能性を模索する予定である.また,ヒトの肝生検組織においてP.g.の免疫局在をHRP検出システムで行ったがNASH患者では鉄の沈着が見られることがあり,判定が難しいことが研究の遅れに繋がった.現在ALP検出システムを用いやり直している.26年度には免疫組織化学的結果をまとめ,その遅れを取り戻す予定である
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