研究課題/領域番号 |
25462858
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
南崎 朋子 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 助教 (30452593)
|
研究分担者 |
吉子 裕二 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (20263709)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Klotho / FGF23 / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
昨年シグナル伝達を確認したヒト可溶化型Klotho(ヒトsKL)およびヒトFGF23の機能の組織特異性を確認するため、および癌細胞由来Klothoについて、8週齢Klotho KOマウスおよび正常マウスに浸透圧ポンプを用いてヒトsKLを腹腔内投与し、2週間後に各組織を回収したところ、FGF23のプロセシングを担うタンパクの1つが、ジェノタイプ間で組織特異的に発現変動していた。骨組織と比較して腎臓ではこのタンパク質の発現が極めて高くなっており、ヒトsKLおよびヒトFGF23のシグナル伝達の組織特異性がみられた原因の1つであると考えられた。 Klotho KOマウス由来骨芽細胞を培養し、DNAアレイによって、sKL添加によって変動する遺伝子を検索し、これらについて、リアルタイムRT-PCRによって発現プロファイルの再現性を確認した。明らかとなった下流因子のうち1つについて、ポリクローナル抗体を用いて骨組織における局在を免疫染色によって検討したところ、Klotho KOマウスの骨細胞、骨芽細胞および骨基質で強い局在を示した。 この下流因子の合成ペプチドを用いて、ラット頭頂骨培養骨芽(RC)細胞への影響を検討したところ、骨芽細胞の増殖・分化には影響しなかったが、基質石灰化を強く抑制した。一方、RAW細胞(破骨細胞株)への影響を検討したが、破骨細胞の増殖・分化には影響がみられなかった。 この下流因子が血中を循環している場合、癌細胞の骨転移マーカーとなりうる可能性を想定し、ELISAやLC-MSを用いて血中濃度の測定を検討したが、測定系は確立できていない。 マウス乳癌(FM3A/R)細胞とRC細胞を共培養したところ、一部のRC細胞にアポトーシスおよび細胞の変質がみられた。この変化はメンブレンを介した共培養では消失したことから、細胞膜を介した結果であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒトsKLおよびヒトFGF23の下流因子の絞り込みは順調に進んでいる。 現在解析に用いているFM3A/R細胞が非転移性の乳癌細胞であることから、高転移性のマウス乳癌細胞株4T1細胞、転移性乳癌細胞株MCF7-14細胞、あるいはその他の乳癌細胞株を入手し、それらの乳癌細胞由来のKlothoの性状解析をTOF-MS等を用いて行う予定である。(当初今年度入手予定だったが、次年度に予定変更)
|
今後の研究の推進方策 |
ヒトsKLおよびヒトFGF23の下流因子について、骨組織だけでなく、癌細胞や骨転移巣における局在をin situ hybridization、リアルタイムPCR、免疫染色やWBで確認する。 この下流因子のRNAiまたは発現ベクターを癌細胞もしくは骨系細胞に導入し、増殖・機能等の細胞応答を確認する。 Klotho KOマウスに乳癌細胞を左心室または静脈注射(尾または頸静脈)等によって導入する骨転移モデルを作製し、上記下流因子の発現プロファイルを確認する。 FM3A/R細胞とRC細胞の共培養時のRC細胞側の変質について、ギャップ結合阻害剤などを用いて詳細を検討する。 FGF23のプロセシングを担うタンパクの1つについて、sKLおよびFGF23の機能発揮に大きく影響することから、このRNAiまたは発現ベクターの構築を開始、または変異マウスの導入を行う。
|