研究課題/領域番号 |
25462863
|
研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
庄子 幹郎 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10336175)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 歯周病細菌 / リポ多糖 |
研究概要 |
Porphyromonas ginigvalisは慢性歯周炎に関わる最重要細菌の一つである。本菌は血液寒天培地上で黒色集落を形成する。我々は、本菌の黒色集落形成機構を詳細に検討したところ、病原タンパク質が菌体表面に局在化する為に二つの重要な機構が存在することを見出している。 (1) C末端に保存されたドメイン(CTDドメイン)を有するタンパク質群は新規の分泌機構(9型分泌機構)にて菌体表面に分泌される。 (2)分泌されたCTD含有タンパク質はAnionic lipopolysaccharide (A-LPS)に結合することで菌体表面に局在化する。 ところで、CTD含有タンパク質の菌体表面受容装置として機能するA-LPSについては、未だ不明な点が多い。そこで、A-LPSの生合成に関わる因子を探索する目的として、黒色集落形成減弱株であるHG66株の原因遺伝子の同定を試みた。本菌には、A-LPSとO-LPSがあると報告されている。それぞれの特異抗体を用いた解析により、HG66株はO-LPSはintactであり、A-LPSのみ不全であることを見出した。これまでの知見よりA-LPSの生合成のみに関わる遺伝子として、7つの遺伝子の関与が考えられた。これらのうち、wbpB遺伝子をHG66株にて発現させてみたところ、黒色集落形成を示すようになった。また、HG66株のwbpB遺伝子をシークエンス解析したところ、240番目のグルタミンが終始コドンに変化していることを見出した。 WbpBタンパク質は、緑膿菌におけるUDP-GlcNAc(3NAc)Aの生合成に関わる分子である。その経路にかかわる分子として、新規にPGN_0002遺伝子も同様にA-LPSの生合成に関与することを見出した。つまり、A-LPSにはGlcNAc(3NAc)Aが含まれていると強く示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
P. gingivalis HG66株は、1990年代半ばに黒色集落形成が減弱した自然変異株として報告された。しかしながら、何故、黒色集落形成が減弱するかについては不明であった。我々は、既知のA-LPS生合成に関わる遺伝子に絞り、一つ一つHG66株に導入していったところ、wbpB遺伝子により黒色集落形成になるようになった。この発見を端緒として、新規にPGN_0002遺伝子もA-LPS生合成に関わることを見出すことができた。
|
今後の研究の推進方策 |
C末端に保存されたドメイン(CTDドメイン)を有するタンパク質は、A-LPSに結合することで菌体表面にアンカーされる。故に、そのメカニズムを詳細に調べることが重要である。 一方、A-LPSの生合成についても、取り組むべき2つの課題があると考えている。一つは、A-LPSにおけるO抗原多糖体の構造の解析である。もう一つは、複数存在する糖転移酵素の役割についてである。 今後は上記の点について、明らかにしていく予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
緑膿菌のO抗原の構成糖にある希少糖(ジアセチルマンノウロン酸)の生合成に関わる因子が、P. gingivalisにも存在することが示唆されたことから、P. gingivalisのO抗原に類似の希少糖(ジアセチルグルクロン酸)が存在するか否かを調べる。 P. gingivalisのLPSを精製し、Lipid Aを除去後のO抗原に目的の希少糖(ジアセチルグルクロン酸)が存在するか否かを調べる。
|