研究課題
歯周病細菌Porphyromonas gingivalisにてHG66株という黒色集落形成減弱株が報告されているが、その原因は不明であった。本菌はA-LPSとO-LPS というO抗原の組成が異なる2種類のLPSを持つと報告されており、HG66株はA-LPSの生合成に障害が起きていると考えられた。そこで、A-LPSの生合成に関わる遺伝子としてwbpB遺伝子をHG66株に導入すると黒色集落形成が相補された。シークエンス解析により、HG66株のwbpB遺伝子は240番目のグルタミンが終始コドンに変異していた。wbpB遺伝子産物については、緑膿菌のB-band O抗原にある構成糖(ジアセチルマンノウロン酸)の生合成に関与することが報告されている。緑膿菌において、ジアセチルマンノウロン酸はWbpA, WbpB, WbpE, WbpD, WbpIというタンパク質により合成される。P. gingivalisにおける相同分子を調べた結果、WbpAホモログにUgdA(PGN_0613)およびPGN_1243、WbpBホモログにPGN_0168、WbpEホモログにPorR(PGN_1236)、WbpDホモログにPGN_0002、WbpIホモログはない、という事が分かった。これまでにPGN_0002は解析されていなかったことから、PGN_0002遺伝子変異株を作製したところ、その変異株はporR遺伝子変異株やwbpB遺伝子変異株と同様な性状を示した。したがって、P. gingivalisも緑膿菌が持つジアセチルマンノウロン酸の生合成に関与する遺伝子を持つものの最後のWbpIホモログはないことから、最終産物としてジアセチルグルクロン酸を合成し、A-LPSのO抗原に存在している可能性が示唆された。本年度に実施したA-LPSの生合成機構の研究は本菌の病原機構に関与することから、更なる解析が必要である。
2: おおむね順調に進展している
本年度に得られた成果を論文発表および学会発表することができた。
本年度の研究成果から、本菌のA-LPSのO抗原にジアセチルグルクロン酸が存在するか否かを明らかにするのが課題である。また、A-LPSが存在することにより、何故、本菌の病原因子であるCTD含有タンパク質が菌体表面に局在できるようになるのかについても不明であり、更なる解明が必要である
歯周病細菌Porphyromonas gingialisには、O抗原の組成の異なる二種のLPSが存在すると報告されている。しかしながら、それらの二種を識別する抗体を用いた解析から、本当に二種類のO抗原が存在するかについては疑問が残るため、一旦、当初計画していた解析方法を中断し、購入予定だった試薬などの費用が未使用となった。
歯周病細菌Porphyromonas gingivalisのO抗原合成に関わる遺伝子について、ゲノム解析より糖転移酵素をコードする遺伝子について、変異株の網羅的作製ならびに性状解析を行う。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
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