当初の研究期間を1年延長したが、最終年度にあたり、いままでの研究成果の総括および論文投稿を行った。 口腔扁平上皮癌はしばしば顎下・頸部リンパ節に転移をきたす。本研究の目的は、癌転移において転移に適した微小環境がリンパ節に形成されているかを検討することにある。癌関連マクロファージ(TAM)が微小環境の形成に関係があることを想定し、そのリクルートに関係するCC chemokine receptor-2(CCR2)とCC chemokine receptor-2 ligand(CCL2)の局在を免疫組織化学的に検討し、さらに転移リンパ節においての癌関連線維芽細胞(CAF)の同定を試みた。 頸部郭清例を研究対象とし、リンパ節転移のある群とない群に分けて検討した。リンパ節転移のある症例では、原発や転移巣でのCCL2陽性好中球(癌関連好中球 TAN)がリンパ節周辺洞に流入し、TAMの増加によるmarginal histiocytosisを誘導していることが判明した。さらにリンパ節に集積したTAMに連続して、SMA陽性の紡錘形細胞があり、この部位に癌細胞の転移が認められた。CAFの特異的なマーカーは見出されていないが、SMA陽性紡錘形細胞はCAFと考えられる。 以上の結果から、口腔扁平上皮癌は原発腫瘍実質に由来するCCL2だけでなく、原発腫瘍周囲に浸潤したTANおよびリンパ節周辺洞に流入したTANに分泌されたCCL2によって周辺洞にCCR2陽性TAMがリクルートされ、集積する。これによってリンパ節転移に適した、CAFを含んだ微小環境が形成されると考えられた。CCL2-CCR2 axisが口腔扁平上皮癌のリンパ節転移に大いに関係していることが示唆された。 これらの成果はJ Oral Maxillofac Surgに投稿し、掲載に至った。
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