研究実績の概要 |
昨年度までに構築した口腔扁平上皮癌のデータベースの中から、口腔粘膜上皮内病変症例を抽出し、その構造異型や細胞異型形態学的特徴の解析、遺伝子変異、epigeneticな変化を反映する、病変部でのcytokeratin13 (CK13) の発現減弱、cytokeratin 17 (CK17)の発現増加および両者の発現境界形成の有無、Ki-67の基底細胞層での発現あるいは基底細胞層以上での多層に渡る発現の増加、病変部と正常粘膜部でのTP53の発現変化(増加あるいは減弱)について評価し、HE所見の構造異型、細胞異型および境界形成と比較検討した。結果は、上皮内癌では、CK13, 17の発現境界形成、Ki-67の発現変化、TP53の発現変化を認める症例の割合が、上皮異形成症例に比べ多く、両者には差が認められた。同部位からの再発症例だけでなく、同時性、異時性に多発癌を認めた症例では、各マーカーの発現変化は同様に認められ、field cancerization(領域発癌)であると考えられ、本研究の仮説で考えられたような、口腔粘膜上皮全体に発生過程でのepigenetic変化が生じている可能性、病変での遺伝子変異のmonoclonalな拡散をsupportするようなepigenetic変化が生じている可能性があると考えられた。 今後も、field cancerization(領域発癌)の観点からは、同病変部から抽出したbisulfite処理DNAを用いた癌抑制遺伝子及びその転写因子のpromoter領域の定量的メチル化検出を引き続き行っていく予定である。
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