研究実績の概要 |
平成27年度はAggregatibacter actinomycetemcomitansのsmall RNAの解析を行った。最終的にsmall RNAを120程度同定することができた。これらの因子の中には血清や唾液中で発現量が変化するものもあった。本解析に伴い、抗菌性ペプチドをコードするRNAについても検討を行ったが抗菌性因子は同定されなかった。また、本年度は口腔から種々のレンサ球菌を分離し、性状解析を行った。その中で、黄色ブドウ球菌や他のレンサ球菌に強い抗菌力を有するバクテリオシンを産生するミュータンス菌を分離した。性状解析の結果、本菌がmutasinIIIを産生することが明らかにした。また、過酸化水素産生能が強いS.sanguinis, S.parasanguinisも分離し、他菌種に対して抗菌力を示した。さらに、黄色ブドウ球菌のS.sanguinisの産生する過酸化水素に抵抗性を示す因子を明らかにした。種々の口腔レンサ球菌種を用いた共培養実験を行い、バクテリオシン産生菌の各菌種の割合に影響を及ぼすことを明らかにした。う蝕・歯周病原因菌をコントロールする目的で甘草由来のグリチルレチン酸の抗菌性について検討し、う蝕原因菌に対して抗菌力が認められた。 3年間の研究期間を通して、1)A. actinomycetemcomitansのsmall RNAおよびペプチド解析、2)口腔レンサ球菌の産生するバクテリオシンの同定、3)レンサ球菌の外環境適応因子である2成分制御系因子のバクテリオシン感受性との関連性、4)口腔レンサ球菌の共培養時におけるバクテリオシンの細菌叢形成に及ぼす影響などについて主に研究を行い、いくつかの知見を明らかにした。本研究を通して、種々の細菌は抗菌性因子を産生し、細菌叢形成に影響を及ぼしていることが明らかとなった。本研究は口腔内細菌叢形成の解明に繋がることと考える。
|