研究課題/領域番号 |
25462874
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
山本 剛 昭和大学, 歯学部, 兼任講師 (80384189)
|
研究分担者 |
入江 太朗 昭和大学, 歯学部, 講師 (00317570)
杉谷 博士 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (20050114)
安原 理佳 昭和大学, 歯学部, 助教 (20453649)
河野 葉子 昭和大学, 歯学部, 准教授 (40195681)
美島 健二 昭和大学, 歯学部, 教授 (50275343)
深田 俊幸 独立行政法人理化学研究所, 総合生命医科学研究センター, 研究員 (70373363)
田中 準一 昭和大学, 歯学部, 助教 (40710166)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 唾液腺 / 再生 / 亜鉛 / 発生 / トランスポーター / ZIP6 |
研究概要 |
亜鉛は微量必須元素であり、組織のターンオーバーや機能維持、発生に重要な役割を担うことが解明されつつある。我々は亜鉛トランスポーター(ZIPs)が唾液腺で果たす役割を解明するため、唾液腺の発生から再生までの一連のメカニズム解明を目的として本研究課題を開始した。 昨年度は、唾液腺に亜鉛が果たす役割を形態形成、水・タンパク質分泌機能の観点から解析した。①我々のマイクロアレイ解析およびRT-PCRの結果から、8週齢マウス顎下腺と比較して胎生14,18日齢で高い遺伝子発現を示したZIP遺伝子群に着目し、そのうち胎生致死の表現系を有さないZIP6ノックアウトマウス(-KOマウス)を用いてHE染色による形態形成および水分泌能における役割を解析した。②ZIPsにより細胞内に亜鉛イオンを取り入れ、それによりcAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害してcAMP代謝に関わることが骨系の細胞で報告されている。唾液腺腺房細胞においては、β受容体刺激によりcAMP依存性に唾液タンパク質の開口分泌が起こることから、ラット耳下腺腺房細胞におけるβ受容体刺激によるアミラーゼ分泌に対する亜鉛イオンの効果を検討した。結果、①②いずれにおいても亜鉛イオンおよびZIP遺伝子は相関を示さなかった。ZIP遺伝子の成体マウス唾液腺における形態形成ないし水分泌能への関与は否定的であるが、今後、加齢やストレス負荷状態におけるその関与を検証する予定である。また、他のZIP遺伝子群に関しても、マイクロアレイ解析において発生過程に高い発現量を示したZIP10に関しfloxマウスを準備中であり、表現系の解析を行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
唾液腺に亜鉛が果たす役割を形態形成、水・タンパク質分泌機能の観点から解析した。 ①ZIP6遺伝子欠損がマウス顎下腺に与える影響を、形態学的および生理学的に検討した。まず、8週齢の雄性ZIP6-KOマウスおよびコントロールとしてのC57BL/6マウスから顎下腺を摘出し、パラホルムアルデヒド固定後に通法に従ってHE染色標本を観察した。その結果、コントロールに比較して、ZIP6-KOマウスの形態に変化はみられなかった。次に、水分泌能をピロカルピン腹腔内投与後の唾液分泌量で評価した。結果、コントロールと比較してとZIP6-KOマウスの唾液分泌量に有意差はみられなかった。 ②ZIPを介して流入した亜鉛がcAMPホスホジエステラーゼ活性を阻害し、cAMP代謝を上昇させるかどうかを検証するため、酵素処理により調製したラット耳下腺腺房細胞を用いてβ受容体刺激によるアミラーゼ分泌に対する亜鉛イオンの効果を検討した。結果、亜鉛イオンはβ受容体刺激によるアミラーゼ分泌には全く効果を示さなかった。 以上の結果から、ZIP6遺伝子の成体マウス唾液腺における形態形成ないし分泌能への関与は否定的であった。この結果は、当初に得られたマイクロアレイ解析の結果を裏付けるものと考えられた。今後、加齢やストレス負荷状態におけるZIP遺伝子の関与を検証する必要があることが確認された。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度の結果から、ZIPにおいては加齢やストレス負荷状態における関与を検証する予定である。加齢の影響はマウスを経時的に飼育し3ヶ月おきにサンプリングし、各唾液腺におけるZIP遺伝子およびタンパク質の発現を検討する。ストレス負荷モデルとしては放射線照射後の唾液腺を一週間おきにサンプリングし、各唾液腺におけるZIP遺伝子およびタンパク質の発現を検討する。ZIPは有用な抗体が存在しないため、必要に応じてIn situ hybridizationを行い、局在の検討に用いる。また、Laser micro dissectionと定量的PCRを組み合わせることにより、腺房、介在部、導管それぞれの遺伝子およびタンパク質発現量を検証する。 また、ZIP6に代わる遺伝子改変マウスとしてZIP10 floxマウスの成体を用いて昨年度と同様に顎下腺に対する形態学的および生理学的検討を行う。また、ZIP6およびZIP10遺伝子を組み込んだアデノウイルスベクターを開発中であり、同ベクターはKOマウスおよびFloxマウスの顎下腺に対するレスキュー実験により判定を行う。さらに、唾液腺障害および障害からの回復実験を進め、ZIP6およびZIP10遺伝子の増減を確認する。以上の結果から、ZIP遺伝子がマウス唾液腺の再生へどのように関与するかを明らかにする。
|
次年度の研究費の使用計画 |
少額であり、かつ購入予定の物品がないうえ、次年度に遺伝子改変マウスの購入が必要となったため。 消耗品として物品費に全額を計上する。
|