研究課題/領域番号 |
25462877
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
古西 清司 日本歯科大学, 生命歯学部, 教授 (20178289)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ペルオキシダーゼ / 病原因子 / 膜タンパク / 活性酸素 |
研究概要 |
侵襲型歯周炎原因菌Aggregatibacter actinomycetemcomitansの産生する膜結合性のキノールペルオキシダーゼ(QPO)は、本菌の過酸化水素耐性及び毒素産生に密接に関わっている。QPOは呼吸鎖成分のキノンと連結していると考えられている。まず、生成物阻害様式の解析により、QPOの触媒反応はping pong Bi Bi機構であることが推定された。また、今までにQPOの阻害剤としてアスコフラノン(Ki=9.56nM)を見いだし、詳細な阻害機構の解析を行い、その阻害様式が、mixed-type inhibitionであることを明らかにしてきたが、さらにQPO阻害剤の化合物ライブラリーを用いたスクリーニングによって、新たにアスコクロリン(Ki=24.7nM)及びイリシコリンB(Ki=600nM)を見出し、その阻害様式が各々competitive inhibition、mixed-type inhibitionであることを明らかにした。また大腸菌を用いたリコンビナントQPOの発現系について検討したところ、γ-アミノレブリン酸の添加によって本酵素の発現量が増加した。この発現系を用いて部位特異的突然変異法により、突然変異体を作製し、基質のひとつであるユビキノール-1の活性中心にあるアミノ酸残基を解析している。具体的には、QPOのN末端側1/3(推定キノール結合ドメイン)に存在しているヘムcの第六配位座である可能性のあるHisとMetを他のアミノ酸に置換した変異体を作製して、その活性、スペクトル、eprなどの解析を行っている。また、本菌の病原性を調べるため、動物モデルとしてカイコの系を確立して、QPO欠損変異株の病原性や、本菌の阻害剤であるアスコフラノンの添加効果を検討した。その結果、カイコの系を用いて、QPOが病原因子であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生成物阻害様式の解析により、QPOの触媒反応はping pong Bi Bi機構であることが推定された。また、QPOの阻害剤の化合物ライブラリーを用いたスクリーニングによって、新たにアスコクロリン(Ki=24.7nM)及びイリシコリンB(Ki=600nM)を見出し、その阻害様式が各々competitive inhibition、mixed-type inhibitionであることを明らかにした。これらの成果は 英文の著書の分担執筆で成果の一部を報告した。またほとんどの成果は2つの学会(日本生化学会と歯科基礎医学会)で発表をした。 さらに本菌の病原性を調べるため、動物モデルとしてカイコの系を確立し、その成果は、「歯周病原細菌の殺カイコ活性に対するアスタキサンチンの抑制効果」という表題で日本小児歯科医学会の小児歯科医学雑誌に発表した。
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今後の研究の推進方策 |
大腸菌を用いた組換え酵素の発現、精製法はすでに確立済みである。さらに突然変異体の作製方法についても検討済みである。N末端側1/3の領域(キノール結合領域)に存在している活性中心のヘムcの第6配位座アミノ酸残基が不明であるが、今回可能性のある保存されているHisとMetについて変異体を作製した。そこでこれらの変異体の酵素活性、スペクトル、epr,円二色偏光、酸化還元電位の測定などにより、第6配位座のアミノ酸残基を同定する。 現在までにリコンビナントQPOの結晶化を試みているが、成功していない。またC末端側2/3については、相同性のある細菌シトクロムcペルオキシダーゼ(複数の酵素の3次元構造が報告されている)より3次元構造をすでに推定済みである。そこで、部位特異的な突然変異法を用いて、N末端側1/3の領域(キノール結合領域)のみを発現させて結晶化を試みる。 過酸化水素の還元部位はC末端側2/3に存在していると考えられているが、相同性のある細菌シトクロムcペルオキシダーゼの結果より、活性に関与するアミノ酸残基のいくつかは推定がなされている。これらのデータからQPOの過酸化水素の還元課程に関与するアミノ酸残基を推定して変異体を作製し、上記と同様の測定法から、必須のアミノ酸残基を同定する。
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