研究課題/領域番号 |
25462879
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研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
江原 道子 朝日大学, 歯学部, 助教 (10425308)
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研究分担者 |
田沼 順一 朝日大学, 歯学部, 教授 (20305139)
永山 元彦 朝日大学, 歯学部, 教授 (50298436)
平野 真人 朝日大学, 歯学部, 助教 (70381184) [辞退]
木下 聖子 創価大学, 工学部, 教授 (50440235)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔前癌病変 / 糖鎖 / レクチン |
研究実績の概要 |
平成26年度には、前年度実施したレクチンマイクロアレイ解析の結果を元に、口腔前癌病変および扁平上皮癌における詳細な糖鎖改変部位を同定することを、最も重要な目的としてあげていた。具体的には、切断もしくは付加される糖鎖構造および糖転移酵素、糖ヌクレオチドトランスポーターを同定することである。 当初、レクチンマイクロアレイ解析結果を用いて、Consortium for Functional Glycomics (CFG, USA)、日本糖鎖科学統合データベース(JCGGDB:文部科学省ライフサイエンス統合データベースプロジェクト)、EUROCarbDB (European Union) などの各種データベースを利用した検索を行っていたが、動物実験で得られたデータでは無く、患者から切除された標本を使用しているため、個体差があり、候補を絞り込むことが非常に困難であった。そのため、糖鎖バイオインフォマティクスの専門家に協力を依頼した。バイオインフォマティクスを用いた検索により、前癌病変である上皮異形成の組織では、4分岐したN型糖鎖構造が正常部に比べて強く出現しており、上皮内癌および扁平上皮癌では、N型糖鎖にコアフコースおよびバイセクティングGlcNAcが強く出現していた。また扁平上皮癌のみでO型糖鎖のシアル化した構造の出現が確認できた。これらの結果より、口腔前癌病変および扁平上皮癌発症における糖鎖改変に関与していることが示唆される糖転移酵素の候補がいくつか考えられた。研究代表者は、このインフォマティクスの結果を元に、それぞれの糖転移酵素の存在を、組織学的に裏付けすることを現在行っているところである。さらに、診断マーカーとなり得るには、高い再現性と診断精度が必要であるため、候補の中からより良いものを探索中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度初頭は、当初の研究計画より遅れることが心配された。具体的には、各種データベースで検索しなければならない情報が膨大で、研究代表者がインフォマティクスの分野に不慣れであることより、候補となる糖転移酵素等が絞り込めなかった。そこで専門家へ研究協力を依頼したが、口腔領域の病変であること、ヒトのデータであることより、個体差や診断上同じ病変でも、ばらつきがあることが障害となり、専門家の解析でも困難を極めた。しかしながら、データ解析ツールの改変およびレクチン組織化学的検索結果を併せて解析することにより、特徴的な構造を絞ることができた。これにより、当初の遅れを年度後半で取り戻すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究実施により、特徴的な変化を示す構造が予測され、関与することが示唆される糖転移酵素がいくつか挙げられた。これに基づき、平成27年度は、各糖転移酵素が組織切片上で出現しているか否かの解析を行う。再現性や診断精度についても併せて検討するとともに、各糖転移酵素に関連する遺伝子についても検討し、口腔前癌病変における新規グライコバイオマーカーを確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
レクチンマイクロアレイ解析を追加で施行する予定であったが、関連する糖転移酵素を絞り込むことができたため、平成26年度は実施しなかった。現在進行中である糖転移酵素発現について、発現に特異性、再現性が認められない場合、今後レクチンマイクロアレイ解析を追加することも予定しなければならないと考えている。その場合、症例の選定が重要となるため、糖転移酵素の発現を確認した上で再度症例の選定を行いたい。そのため、予算上、研究の遂行が困難となることを避けたく、平成26年度分の一部を次年度へ繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
糖転移酵素の発現確認を行った後、再現性に乏しく、追加でレクチンマイクロアレイ解析を行う予定である。この場合、マイクロダイゼクション法を用いて試料を採取する必要があるため、消耗品の購入およびレクチンマイクロアレイ解析費用として使用したく、計画している。
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