現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究実施計画として,「悪心・嘔吐誘発と摂食・飲水調節に関わる最後野ニューロン群の同定」を目指して実験を行った。具体的には,最後野の非Ihニューロンが摂食行動調節に特化して機能分化しているか否かを明らかにする。 アミリンに応答するニューロンは全て非Ih ニューロンであり,アミリンは非Ih ニューロンに接続しているニュ ーロンのシナプス前部に作用してグルタミン酸の放出を増強するという作用機序を示唆するデータについて確定して,論文発表を行った。さらに,CCK-8応答ニューロンの解析も行い,アミリンと同様に主としてシナプス前受容体を介して応答が生じていることを明らかにした。当初予定していた,Hチャネル阻害薬の標的部位を明らかにするために,両側迷走神経切除の影響,最後野切除を行 った場合のサッカリン嗜好性の変化を調べること,および,両側迷走神経切除群については,新鮮脳スライス標本を作製し,最後野ニューロンのパッチクランプ記録を行い,Ihニューロンと非Ihニューロンの存在比率を調べ,これにより迷走神経軸索からの入力を受けている最後野ニューロンのサブタイプを同定することは,現在パイロットスタディを行っているところである。以上のことから,予定していた研究計画について概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究実施計画とて,1)平成25年度にパイロットスタディを行った実験について本格的に確定実験を行う。2)最後野グルコース応答性ニューロンの化学感受性と形態的特徴の解明するために,グルコース応答生を同定したニューロ ンに対して,従来の方法(Funahashi et al., 2001~2012)であるスライスパッチクランプ法により電気生理学的特性( 静止電位,活動電位,膜時定数,膜容量,膜抵抗,イオンチャネル活性)を調べる。続いてグルコース感受性お よび用量依存性を調べる。同時に,アポモルヒネ等の催吐物質や摂食抑制物質であるアミリン、CCK,ニコチンなどに対する応答性を調べる。細胞形態観察のためニューロバイオチントレーサーを電極内液に入れて用いる。3)Ih(-)ニューロンとIh(+)ニューロンの神経伝達物質については,グルタミン酸,ドパミン,ノルアドレナリン,セロトニンなどが想定されるが,これらの詳細を免疫染色法を用いて明らかにする。4)悪心・嘔吐誘発と摂食・飲水調節に関わるニューロンネットワークの解明 催吐剤投与群とアミリン投与群について,各薬剤投与の2 時間後に麻酔下にて4%パラホルムアルデヒドを用いて灌流固定を行う。脳を摘出しミクロトームを用いて厚さ50 ミクロンの凍結切片を作成し,cFos 抗体を用いた 免疫染色を行い脳幹部,視床下部,視床背内側核,背内側前頭連合野の各部におけるcFos 陽性細胞を同定し細 胞数を定量して解析を行い,機能的ニューロンネットワークを明らかにする。
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