研究課題
味覚機能と自律機能との機能協関についての研究は、極めて限られたものであり、その有無や神経機序については現在のところ不明である。本年度では、島皮質を含む薄切標本を作成し、アナンダミド投与によりカンナビノイド受容体を活性化した際の興奮伝播パタンの変化を膜電位測光法を用いて観察した。アナンダミド存在下では、味覚野に約5 Hzの周期的活動が引き起こされ、その周期的活動の反復に伴い、神経興奮は尾側の自律神経関連領野へ伝播した。しかしながら、アナンダミド存在下では、尾側からの抑制が強く働き、カプサイシン投与時とは異なる興奮伝播が引き起こされることが示唆された。GBABA受容体agonist(Bicuculline)の灌流投与により、約5Hzの周期的活動は不変であったが、同期化の程度が大きくなった。一方、GABAB受容体agonist(CGP55845)の灌流投与により、これらの周期的活動は消失した。以上のことから、アナンダミド投与が島皮質内の味覚野-内臓感覚運動領野間におけるニューロン発火活動の同期化を誘発し、カプサイシン投与時とは異なる機能協間を生じさせる可能性が示唆された。また、これらの周期的同期化は、GABA受容体細胞による抑制性の影響を強く受ける可能性が示唆された。また、ヒトfMRIを用いた実験においても、カプサイシン溶液を味覚認知する際の島皮質の強い活動を明らかにした。次年度では、カラム構造が明瞭なバレル皮質と不明瞭な島皮質を用いて、これらの抑制性細胞がどのように周期的同期化に関与するかを明らかにしていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画では、アナンダミド投与が島皮質内の味覚野-内臓感覚運動領野間におけるニューロン発火活動の同期化を誘発し、カプサイシン投与時とは異なる機能協間を生じさせるか否かを、脳薄切標本を用いて調べることであった。当初の計画通り、膜電位測光法を用いて、周期的同期化の存在を明らかにし、その神経機構の詳細を明らかにしつつある。また、ヒトfMRIを用いた実験においても、カプサイシン溶液の投与による脳賦活部位を同定できたことから、当初の予定通り順調に研究が進展していると思われる。
次年度では、カラム構造が明瞭なバレル皮質と不明瞭な島皮質を用いて、GABA抑制性細胞が引き起こされた周期的同期化にどのように関与するかを、膜電位測光法を用いて明らかにしていく。また、島皮質を被覆する頭蓋骨を開窓し、体温計・心電図を装着した全動物標本を用いて、カプサイシン溶液の舌及び胃内への滴下時に生じる島皮質ニューロン活動をin vivo 膜電位測光法でモニターすることで、カプサイシンを経口摂取した際の自律神経反応と島皮質の活動の関係を明らかにすることにもチャレンジする予定である。
予定以上に実験が進展したため、実験実施回数が当初予定していた実施回数よりわずかに減少した。そのため、実験にかかわる消耗品の購入額がわずかに減少した。次年度は、膜電位測光法を用いた追加実験および胃内への直接投与或いは口腔外へ引き出した舌にカプサイシン含有/非含有の味溶液を滴下し、島皮質の活動と自律神経応答を観察するIn vivo 実験を行う予定である。今年度から持ち越しとなった予算については、次年度行う実験の消耗品購入に充当する。
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Pflugers Archiv - European Journal of Physiology.
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Experimental Brain Research
The European Journal of Neuroscience.
巻: 38 ページ: 2999-3007
10.1111/ejn.12299
http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~phys/