研究課題
本年度は、アナンダミド存在下で引き起こされた味覚野における約4 Hzの周期的活動が、尾側の自律神経関連領野へ伝播する、その神経メカニズムをさらに詳細に解明するため、様々な興奮性及び抑制性ニューロンのブロッカーを用い、周期的同期化に対するその効果を検討した。アナンダミド存在下では、尾側からの抑制が強く働き、カプサイシン投与時とは異なる興奮伝播が引き起こされるが、GABA(A)受容体拮抗薬は、周期的活動のピークをわずかに大きくしたものの、尾側からの抑制には影響しなかった。一方、GABA(B)受容体拮抗薬は、尾側からの抑制を完全に解除した。これらのことから、周期的同期化の生成に、GABA(B)受容体の関与が強く示唆された。また、アナンダミドと機能的に反対の作用を示すオレオイルエタノールアミドをアナンダミド存在下で投与すると、アナンダミド存在下で引き起こされた周期的同期化が消失した。以上のことから、島皮質におけるネットワーク内の少数のニューロン群に引き起こされた周期的発火活動がネットワーク全体のニューロン群の周期的同期発火を誘引するというネットワーク・オシレーションの神経機序の一部が明らかとなった。今後、味覚認知領野と自律神経感覚運動領野が島皮質内の吻尾側に共存する解剖学的必然性を説明する生理学的機能が明らかになることが期待される。現在、得られた結果を学術論文として投稿中である。また、これまでに行ってきた、ヒトfMRIの実験の解析により、カプサイシンの舌への滴下による前部島短回の脳活動変化と指尖体温変化に有意な相関が認められた。カプサイシン香辛料の味覚認知そのものが自律神経機能を活性化する脳機序が明らかになれば、人類が、何故、スパイスを必要としてきたのかの科学的根拠の一端を与えることができる。fMRI実験についても、すべての実験及び解析が終了し、まもなく投稿予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、カプサイシン摂取時にみられる自律神経反応が島皮質内での味覚野と内臓感覚運動領野間の周期的同期化を伴った機能協関により生じる可能性について、in vitro 実験に加え、in vivoやヒト被験者におけるfMRIを用いた実験を行い検討することを目的とした。これまでの研究で、In vitroおよびヒトfMRIを用いた実験では、当初予定していた実験および解析をすべて終了し、学術論文として投稿中である。現在、カプサイシンを経口摂取させ自律神経反応が見られた時の島皮質及びRVLMのニューロン活動の関係を、島皮質及びRVLMに慢性記録電極を設置した全動物標本を用いて調べる実験に入っていることから、当初予定していた研究の目的はおおむね順調に進んでいると思われる。
現在、カプサイシンを経口摂取させ自律神経反応が見られた時の島皮質及びRVLMのニューロン活動の関係を、島皮質及びRVLMに慢性記録電極を設置した全動物標本を用いて調べる段階に入っている。当初は、ユニット活動記録、体温・心拍数記録及びビデオ撮影を行ないながらカプサイシン含有/非含有飼料を摂取させ、2種の飼料間で島皮質及びRVLMの活動にどの様な差異があるか解析する予定であったが、これまでの実験結果から、カプサイシン、アナンダミドおよびオレオイルエタノールアミドを含む味溶液を投与した際の慢性活動記録に移行していく予定である。
昨年度予定していた実験及び解析が早期に終了し、その後、学術論文の投稿準備に着手していたため、昨年度予定していた研究費の一部が次年度使用額として残った。
次年度は、In vivoを用いた残りの追加実験をおこなう予定である。当該助成金は、次年度請求している助成金とあわせて、In vivo実験の消耗品の購入、学術論文の投稿料および学会発表の旅費に使用する予定である。
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Pflugers Archiv : European journal of physiology.
巻: 1 ページ: 1
巻: 467 ページ: 267-287
10.1007/s00424-014-1511-5.
http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~phys/