研究課題
本研究では、ラット島皮質のスライス標本を用いて、アナンダミドを含む人工脳脊髄液を灌流投与したときに、島皮質味覚野と胃腸自律機能関連領野の神経活動が周期的に同期化する機構を膜電位測光法を用いて観察した。その結果、シータリズムの振動興奮が味覚野において誘発された後、胃腸自律機能関連領野に伝播し、味覚野と自律機能関連領野の神経細胞間にシータリズムの周期的同期化が生じることを明らかにした。また、アナンダミドにより誘発される周期的同期化は、CB1受容体拮抗薬およびN-オレイルエタノールアミンによって抑制されることを見出した。最終年度では、in vitro でPPARα作動薬についての追加実験を行い、アナンダミド誘発性の周期的同期化はPPARα作動薬でなくGPR119作動薬により抑制されることを明らかにした。これらの結果から、CB1受容体とGPR119の相反する作用により、島皮質味覚野と胃腸自律機能関連領野の神経細胞間に生じるシータリズムの周期的な神経活動が制御され、味覚野と胃腸自律機能関連領野における満腹または空腹時の脳内の神経活動に関与している可能性が示唆された。これら一連のin vitro研究の成果を、原著論文として最終年度に報告した。さらに、本研究では、カプサイシンのヒト舌への投与により、島皮質味覚野と自律機能関連領野が賦活し、カプサイシンの辛味認知そのものが指尖体温上昇のような自律神経反応を引き起こす可能性があることを、機能的核磁気共鳴断層画像撮影装置を用いて明らかにした。情動的な摂食行動についての神経メカニズムや辛味の認知に伴う自律神経反応のメカニズムの全貌はこれまで確立されていなかったが、島皮質における周期的同期化はそれらの機構の解明に大きく寄与するものであり、本研究の研究意義は高い。
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
Brain Structure and Function
巻: - ページ: 1-9
10.1007/s00429-017-1400-8
eNeuro
巻: 3(3) ページ: e0138-16: 1-19
10.1523/ENEURO.0138-16
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 32529: 1-14
10.1038/srep32529
http://web.dent.osaka-u.ac.jp/~phys/publ.html