研究課題
本研究では、顎顔面領域における神経麻痺の発症機構を明らかにするため、顔面神経核や三叉神経運動核の運動ニューロンにおける漏洩カリウムチャネル(TASKチャネル)の制御機構(特に一酸化窒素による制御機構)に着目して研究を推進した。いずれの運動核においても、小型運動ニューロンでは、漏洩カリウム電流がTASK1チャネルにより媒介され、大型運動ニューロンでは、TASK1およびTASK3チャネルにより媒介されることが明らかになった。神経麻痺発症の際、一酸化窒素が運動ニューロンに発現している漏洩カリウムチャネルに作用し、膜興奮性を変調している可能性が高いため、一酸化窒素が運動ニューロンに及ぼす役割を検討した。その結果、小型運動ニューロンでは、一酸化窒素により入力抵抗の減少が認められ、スパイク潜時が遅延していた。その一方、大型運動ニューロンでは、一酸化窒素により入力抵抗及びスパイク潜時はほとんど変化していなかった。これらの結果は、小型運動ニューロンでは細胞体にTASK1チャネルが豊富に発現しており、大型運動ニューロンでは細胞体にTASK1チャネルが豊富に発現し、樹状突起にTASK3チャネルが豊富に発現していることに起因している可能性が示唆された。以上の結果から、神経麻痺発症の際、一酸化窒素により運動ニューロンに発現するTASKチャネルの機能変調が生じ、運動ニューロンの膜興奮性が変化するものと考えられる。こうした神経機構により、顎顔面領域における神経麻痺が引き起こされる可能性が示唆される。
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Brain Structure & Function
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