研究課題
1)軟骨組織特異的CCN3過剰発現ベクターの構築とトランスジェニックマウスの作製軟骨組織特異的CCN3過剰発現ベクター(Col2a1-mNOV-GFP-IRES-LacZ)を作製した。CCN3蛋白はGFPタグとの融合蛋白として発現させたが、蛋白量の不足などで十分なGFPシグナルが得られない場合の外来遺伝子のトレーサーとしてIRES-LacZ遺伝子をmCCN3遺伝子の下流に接続した。作製したCol2a1-mNOV-GFP-IRES-LacZコンストラクトは、マウス受精胚に注入し、トランスジェニックマウスを作製し、2系統のfounder lineを得た。2)CCN3col2a1tgマウスの骨-軟骨領域における表現系解析得られたCCN3col2a1tgマウスの表現型を胎生18.5日齢の骨格標本より、肋骨、胸骨の異形成、長管骨の骨化部分の短縮が観察された。そこでマイクロCTにより骨成分の変化を調べたところ、骨化度の低下が認められた。遺伝子発現の変化を調べるために行った胎児期の長管骨の切片標本を用いた軟骨および骨分化マーカー遺伝子のin situ hybridizationから、軟骨の最終分化マーカー遺伝子の発現が遅れている事、また、骨芽細胞マーカー遺伝子陽性細胞の出現も遅延している事が明らかとなった。内軟骨性骨形成過程における軟骨から骨への転換は、軟骨組織への血管の侵入にともなって破骨細胞や骨芽細胞が出現する事が知られているが、CCN3col2a1tg長管骨では、軟骨組織への血管侵入も著しく遅延している事が明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は、①軟骨組織特異的CCN3過剰発現ベクターの構築とトランスジェニックマウスの作製、②CCN3col2a1tgマウスの骨-軟骨領域における表現系解析を行う事が当初の予定であった。①に関しては、軟骨組織特異的CCN3過剰発現ベクターの構築が完了し、培養軟骨細胞への遺伝子導入によりCCN3の発現が見られる事も確認できた。さらに、このベクターをマウス受精卵に導入し(外部委託)、founder lineの同定(2 lines)、軟骨組織における外来遺伝子の発現も確認できたため、①の計画は完遂できている。さらに②に関しては、CCN3col2a1tgマウスの表現型が同腹マウスで安定しないため、同一founder line由来のCCN3col2a1tg雄雌を交配し、安定した表現型を得た。これまでのところ、骨格標本、組織切片を用いた免疫化学的解析、組織化学的解析、in situ hybridizationによる遺伝子発現解析、マイクロCTによる骨化組織の解析を行っており、当初の計画は十分完遂したものと思われる。
(今後の推進方策)これまでに得られた結果をもとにCCN3col2a1tgの表現型を分子レベルの変化として説明する。これまで既に得られている結果より、CCN3col2a1tgマウスでは内軟骨性骨形成過程に異常がある事は明らかであるが、有意な遺伝子発現の変化が観察されない場合は、Chip遺伝子発現解析、次世代シークエンス解析、代謝産物解析、microRNA網羅解析により遺伝子レベルの変化をとらえる。また、出生後の軟骨組織におけるCCN3の機能を解析するために、成体CCN3col2a1tgマウスの軟骨組織、特に関節軟骨に注目する。これまでの予備的な観察では、関節軟骨に大きな表現型が生じていることが明らかになりつつある。正常な関節軟骨の機能維持におけるCCN3の役割を分子レベルで解明する事も視野に入れている。
本年度は、使用したマウスの匹数が当初の予定より若干少なくなったため、物品費の使用が少なく次年度使用額が生じた。しかしながら、次年度は予定より多くのマウスを使用する予定で、本年度の剰余額は次年度に使用したい。上記の理由で、次年度使用額は物品費としての使用を予定している。
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