研究実績の概要 |
本研究では,我々が発見した新規ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)11を中心として,歯周病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisの増殖と病原性に関与するジペプチド分解系の解明を目指し,DPP11およびその他DPP酵素群の発現と細胞内分布について検討した。P. gingivalis ATCC 33277株ゲノムDNAを鋳型としてDPP3, DPP4, DPP7, DPP11,及びAla-DPP遺伝子断片を調製し,各DPP遺伝子を大腸菌発現系により発現し精製した。組換えタンパク質の酵素活性をジペプチド-MCA蛍光基質を用いて測定し,kcat, Km等の酵素学的パラメーターを決定した。また,種々の薬剤耐性遺伝子カセットを該当遺伝子に挿入しDPP遺伝子破壊株を作成した。これらの野生株,遺伝子破壊株での検討から,全てのDPP活性はペリプラズム画分に存在すること,また,ジンジパインと異なり菌体外には分泌されないことを明らかにした。DPP欠失株の検討から,疎水性アミノ酸を基質とする新規のエキソペプチダーゼであるDPP5,及びN-末修飾ジペプチド及びトリペプチドを遊離するエキソペプチダーゼ(acylpeptidyl oligopeptidase, AOP)を発見し,それらの生化学的性状と酵素学的特性を決定し報告した。 本研究の結果,糖非発酵性でアミノ酸を炭素源・エネルギー源とするP. gingivalisでは,栄養源であるタンパク質は菌体外及び菌外壁に分布する2種のエンドペプチダーゼ(KgpとRgp)によってオリゴペプチドまで分解されるが,この分解に続いてオリゴペプチドはペリプラズム画分に移行し,同画分では種々のアミノ酸を基質とするエキソペプチダーゼ群(DPP, TPP, AOP)によってジペプチド,あるいはトリペプチドに分解され菌体内に取り込まれるというオリゴペプチド分解系の全容が明らかになった。
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